私たちの生活や経済活動になくてはならない「水」。水は、普段の生活の中で当然あるものだと考えられているものかもしれない。しかし本当にそうなのだろうか。
日本ではゲリラ豪雨や、洪水の発生、台風の大型化、竜巻など気候変動の影響と思われる事象が多く発生している。これらは地球温暖化が気候変動に影響を及ぼし、世界的に降水量を変化させていることが原因とみられる。
世界の各地域で干ばつや洪水の異常気象を引き起こす中で、水の「利用可能量」も大きく変化している。世界的な人口増加、経済成長、都市化などの要因も影響して飲料水、農業・工業用水が不足する地域が出ているのだ。世界では水の所有権、水の資源配分、水質汚染の問題など、水に関連する紛争が発生しているのをご存知だろうか。
今回は日本では意外と知られていない「水リスク」について紹介したい。
「水リスク」とはなにか?
世界経済フォーラムの『グローバルリスクレポート2016』によると、工場生産などの経済活動や人口増加が、世界各地で水資源を減少させており、経済競争の激化と誤った水資源の管理が影響して、世界各地で水が利用できなくなると予想している。
つまり「水リスク」が、全世界および全産業界に対して重大な悪影響を及ぼす可能性が非常に高いという認識があるのである。これは「世界認識」と言っても良いだろう。
OECDの2012年の調査によると、水の需要は2000年から2050年までの間に工業用水(+400%)、汽力発電(+140%)、生活用水(+30%)と、全体では約55%の増加が予想されている。
地域別では特に北・南アフリカ、南・中央アジアを中心に深刻な水不足に見舞われると予想されている。これらの地域は、世界人口の約40%に相当するのだ。それだけ状況は深刻ということである。
しかしながら日本での認識はどうだろうか。
日本国内では、水は豊富で「水リスク」とは関係がないと考えている企業が多いのではないだろうか。
世界的な「水リスク」日本も無関係ではない
ここで資源としての水を少し考えてみたい。
国土交通省の「平成26年版 日本の水資源」によると、地球上の水は、97.5%が海水で、飲み水として利用できる淡水はたった2.5%、そのうち地下水や河川、湖沼の水として存在する淡水の量は、全体の約0.8%でしかなく、非常に貴重なものとしている。
もう一つ、知っておいて欲しい概念として「バーチャルウォーター(仮想水)」がある。これは食料を海外輸入している国において、もしその輸入している食料を自国で生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したものである。
環境省のバーチャルウォーターのWebサイトよると、1kgのトウモロコシを生産するには、灌漑用水として1800リットルの水が必要となり、牛肉1kgを生産するには、牛はトウモロコシなどの穀物を大量に消費しながら育つため、その約2万倍もの水が必要となると試算されている。
つまり、日本は海外から食料を大量に輸入することによって、その生産に必要な水を自国で使用せずに済んでいるということなのだ。
2005年において、海外から日本に輸入された「バーチャルウォーター」の量は、約800億トンにものぼり、これは驚くことに日本国内で使用される年間の水使用量と同じということなのである。
つまり、日本は食料の輸入により、この「バーチャルウォーター」を相当量輸入しているのである。世界における水不足や水質汚染等の問題は、日本の食糧事情とも密接な関係があるのだ。