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(写真=PIXTA)

飲食店やクリニックなどの個人オーナーだけでなく、副業をしているサラリーマンも一度は「個人事業の形態よりも会社というシステムを使ったほうが節税につながりやすい」という話を聞いたことがあるだろう。ただ、気になりはするものの、イマイチよく分からず一歩を踏み出せずにいる人も少なくない。そのような方に向けて、今回は会社設立による節税のメリットなどについて解説していく。

会社設立による税金面のメリット・デメリット

会社設立の税金上のメリットは具体的に次のようなものだ。

【メリット】

1.事業主への給料を経費にできる
会社設立による最大のメリットは「経営者自身に払う給料が経費になる」ことだ。個人事業主の場合、自分自身に対する給料は経費にならないからだ。利益の中で生活をし、更にそこから税金を払わなければならない。仮に役員報酬(経営者を含む役員への給料)を毎月30万円とし、これを差し引く前の利益が1000万円だとしよう。それぞれの税額や手元に残るキャッシュは次のようになる。

<個人事業主のままの場合>
1000万円×(33%+10%)=430万円…所得税・住民税
∴1000万円‐430万円=570万円…手元に残るキャッシュ全額

<会社設立した場合>
(1000万円‐30万円×12カ月)×30%=192万円…法人税等
30万円×12カ月×(20%+10%)=108万円…所得税・住民税
1000万円‐30万円×12カ月‐192万円=448万円…会社に残るキャッシュ
360万円‐108万円=252万円…経営者個人の手元に残るキャッシュ
∴448万円+252万円=700万円…会社と経営者個人の手元に残るキャッシュ全額

※各種控除等を考慮しないものとする

利益が多額に出た場合、会社にした方が個人事業主より130万円も多い。つまり、利益が出ている場合は、会社の方が圧倒的に節税できるのだ。

2.仕事を手伝っている家族への給料が経費になる
個人事業主の仕事を家族が手伝った場合、その家族に給料を払っても、原則として経費にならない。青色申告の場合、青色専従者の届出を出せば、妻や子どもへの給料が経費にはなるものの、他に仕事を持ってはならないことや年齢制限など制約が多い。

しかし、会社の役員や従業員として家族に給料を払った場合、特段の制約を受けることなく、全額を経費として落とすことができる。実際に家族へ支払っても同族会社の場合には家計でプラスマイナスゼロと同然なので、キャッシュが出ていくことなく、節税だけが実現することとなる。

この他、「個人事業主のような按分計算が不要になる」、「自宅の一部を事務所とすることで個人負担を抑えられる」などがあげられる。一概には言えないが、現役世代の個人事業主の悩みのタネである国民健康保険料や年金保険料も、会社を設立し、社会保険に加入することで圧縮することもできるケースもある(社会保険料が高い場合があるため注意が必要)。

【デメリット】

会社設立はメリットばかりではない。

まず、個人では掛からない会社設立費用や事務負担が増加する。企業会計、法人税法に則った形で会計処理を行う必要があるため複雑になることにも念頭にいれておきたい。

税金面で言えば、「たとえ赤字でも年7万円は毎年払わなくてはならない」という点だ。年7万円というのは、法人住民税の均等割額だ。会社つまり法人は、民法上「人」として扱われるため、住所を持つ以上、人頭税(=均等割)を払わなくてはならない。

この他、「役員賞与は損金にならない(なお、事前確定届出制度を使用すれば経費として認められる)」「税務調査が入る確率が個人以上に高い」などが挙げられる。

会社としての事業は個人事業よりもメリットが多い

上述「会社設立による税金面のメリット・デメリット」で見たように、所得税と法人税で税率が異なり、一般的には所得額が増えるにつれて法人化したほうが納税額を少なく抑えることができるメリットがある。具体的な所得額の分かれ目に関しては、家族構成や控除によっても異なるため、税理士をはじめとする専門家と相談して検討していただきたい。

また、節税のメリットのみならず、「個人ビジネスよりも会社ビジネスの方が安定しているから安心」というのが世間の常識であるため、取引先や金融機関などから信用がおかれやすく、事業拡大のスピードが格段に上がるからだ。

ただし、その分、日々の会計記帳や税務申告などの手続き、その他の書類管理をきちっと行っていかなくてはならないため、手間がかかる側面がある。これについては、昨今、クラウドサービスやアウトソーシングサービスが低価格で充実しているため、こういったサービスを上手に活用して、支出を抑えていくことで対処できる。

こういったバランスを考慮し、規模がある程度大きくなり、今後も事業を存続・拡大する意志があるのなら、会社設立を検討しても良いだろう。(提供: みんなの投資online

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