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(写真=PIXTA)

事業承継とは、会社の経営権を後継者に引き継ぐことである。後継者というと親族や、それまで社長を務めていた前任者の信頼が厚い部下など内部で完結するイメージが強いが、外部の第三者に事業を売却することも事業承継のひとつといえる。ここでは、事業売却による事業承継の種類とメリットについて解説する。

事業売却による事業承継とは?

事業売却による事業承継とは、会社そのものを外部の第三者に売却することにより、事業を継続する方法である。「事業売却は大企業の話」と思われがちだが、実は近年、中小企業の事業承継を目的とした事業売却が急増している。中小企業庁の統計によると、35年前は全体の3.7%に過ぎなかった「外部の第三者」への事業承継が、過去5年以内は39.3%まで上昇している。2011年時点で59歳9ヶ月と発表されている経営者の平均年齢も上昇傾向にあり、少子化と地方空洞化による後継者不足も相まって、この割合はさらに増加する可能性が高い。

事業売却の種類とは?

事業売却による事業承継には次のようないくつかの種類がある。

【事業承継における合併】
会社の権利義務を他の会社に引き継ぐことを指す。資産・負債はもとより、従業員の雇用も維持され、自社はひとつの事業部として、合併先の会社にて存続するケースが多い。

【株式の売却】
保有の自社株を他社(者)に売却することを指す。つまり、株式の売買により主要株主が交代し、新規株主が送り込む経営陣によって以後の経営が行われるということである。事業売却の中で最もイメージしやすい形だと言えるだろう。現金で売却収入を得ることが一般的だ。

【株式交換】
株式交換とは、株式会社が発行済株式の一定割合を他会社に取得させることをいう。自社の株式を他の会社に取得させることで子会社化もしくは完全子会社化する。株式交換直前の株主は、親会社に株式譲渡をしたことと同じ扱いになる。なお、買い手企業が上場会社でない場合、対価を株式とするケースは少ない。

【会社分割】
会社の事業に関して有する権利義務(資産・負債だけでなく雇用している従業員を含む)の全部または一部を他の会社に承継させることを指す。会社分割の対価は分割元の会社が事業を引き継ぐ会社から受け取る。契約次第では、同時に事業を引き継ぐ会社の株式を分割元の経営者が手に入れることもできる。

【事業譲渡】
会社の事業にかかる資産や負債(ノウハウや顧客などの簿外要素を含む)の一括売買を指す。会社分割と似ているが、買い手にとって不要な資産や事業要素は引き取ってもらえない。対価は通常現金。事業譲渡した会社が受け取る。
会社の財産だけでなく事業や経営権に至るまですべて他に引き継ぎたい場合は合併、株式の売却、株式交換を検討することが多い。一方、一部資産や事業を自らが経営する会社に残しておきたい場合、あるいは優良事業のみに絞り、承継を早く進めたい場合は会社分割や事業譲渡が適している。これには、自分の得意分野に絞って事業を残し、他は得意な企業に承継する方法も含む。

事業売却による事業承継のメリットとは?

事業売却による事業承継のメリットは、買い手、売り手、その他ステークホルダーの三方にとって良い話になりやすい点だ。

買い手は、ヒト、モノ、ノウハウ、取引先、シェア、知名度など経営拡大に必要な資源をスピーディーに獲得することができる。いわゆる「お金で時間を買う」ことができる。また、過去の実績がある分、全くのゼロから新規事業を立ち上げるよりも、売上や利益の予想を立てやすいというメリットもある。

売り手は、廃業するよりも従業員に迷惑をかけることなく引退ができる。廃業に伴う費用を抑えられるどころか、売却する事業に見合うキャッシュを得ることができる。まだまだ働ける年齢で事業売却した元オーナーが、売却先の会社の取締役や子会社の社長になって仕事を続ける場合もある。

買い手と売り手以外のステークホルダーにとってもメリットがある。その事業の取引先はもちろん、優良企業の廃業を避けることは、地域社会や日本経済にとってもプラスだ。

事業売却による事業承継を成功させるための注意点

事業売却による事業承継を成功させるためには、企業価値の評価を上げるための準備を早めにしておくこと、そして売却元自らが自社の企業価値を正確に把握しておくことが肝要だ。自社の事業や理念を理解してくれる良いご縁に、いつ出会うか分からないので、周到に準備を進めておきたい。いずれにせよ、事業売却を少しでも検討し始めた時点で、事業売却による事業承継に強い公認会計士や税理士に相談するのがよいだろう。(提供: みんなの投資online

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