今後の成長のカギは「富士フイルム」に学べ?

さて、決算発表会での「消費者の購買行動が変わってしまった。」というコメントにもありますが、普通に考えてコンパクトカメラ市場はスマートフォンに市場を奪われているのです。キャノンは2014年度の計画では、売上高3兆8500億円(前期比3.2%増)、営業利益3600億円(同6.7%増)と2期連続の増収増益を計画していますが、デジタルカメラの停滞によって小幅な増収増益に留まる前提での計画となっています。同社は他にもオフィス用の複写機やレーザープリンタ等の事務機器、半導体露光装置なども手がけていますが、収益の柱となるコンパクトカメラ市場が今後もシュリンクしていくことは避けられないでしょう。

さて、ここでロールモデルと成りうるのは、富士フイルムです。フイルム市場はカメラ市場よりも先行してスマートフォンの煽りを受け、2000年をピークにその後市場が10年で10分の1にまで縮小しているのです。世界最大手であったコダックは2012年に経営破綻しています。しかし、富士フイルムは、1兆4403億円であった売上高を2012年度は2兆2147億円と1.5倍にしているのです。両者を分けたのは何だったのか。それは、富士フイルムがフィルム事業に固執せずに、同社の技術力を他事業に転用して成功した結果です。現在富士フイルムの売上げの半分を担うのは、医療用フィルムや内視鏡の販売、化粧品アスタリフトの販売が含まれるインフォメーションソリューションです。この事業は2000年以降に始まった事業であり、フイルム事業が10年かけて消滅しているうちに、同社の技術を活かした新しい事業を確立しているのです>コンパクトカメラ市場は、フイルム市場と同じように今後も縮小していくものと思われます。しかし、市場が縮小する中、売上げを1.5倍に拡大した富士フイルムの戦略には、学ぶべきことがたくさんあるでしょう。

長期的な視点で見ると、キャノンはコンパクトカメラ市場に次ぐ次の柱と成る産業を生み出す必要性に迫られています。富士フイルムもフイルムの現像技術を医療という全く別の領域に転用したり、現像液に含まれる成分の美容効果に目をつけて化粧品販売に踏み切るなど、ドラスティックな事業転換を行ったことにより現在に至ります。2000年に社長兼CEOに就任し、改革を行った古森重隆氏によると、当時の富士フイルムは、まるで車が売れなくなったトヨタのように危機的状況であったと振り返ります。事業再建にあたり、まず富士フイルムが倒産する前提の試算を立て、そこから逆算して、いかにそれを防ぐかという検討を行ったそうです。今後のキャノンの命運も、富士フイルムと同様の切実さを以て当たれるかが、命運を分けるカギになるのではないでしょうか。

【参考文献】
キヤノンと吉野家の決算を分析する(東洋経済オンライン)
決算は計画未達、キヤノン悩ますカメラ減速 (東洋経済オンライン)

photo: My Canon 5D + new Canon 50mm EF F1.4 Lens / 55Laney69