経営者を悩ませる、社員の長時間残業。社員が疲弊するのみならず、経営コストを圧迫する原因にもなる。今回は自ら「残業ゼロ将軍」を名乗り、特定社会保険労務士として、企業の残業削減に取り組む、ビルドゥミ―・コンサルティング(東京都杉並区)の望月建吾社長に話を聞いた。

自分の退社時間毎朝宣言

「残業を減らすには3つのポイントに基づいて労働環境を改善するだけでいい」

望月社長が語る、この3つのポイントとは、時間の制約による「極限状態の有効活用」、「業務の標準化」、そして就業規則や賃金・人事といった「制度の見直し」だ。

またこのような取り組みは、経営者によるトップダウンや総務担当者だけで行うのではなく、社内に残業削減のワーキング・グループを結成して実行する方が効果を発揮するとしている。

まず「極限状態の有効活用」とは、試験前の一夜漬けのように、明確に締め切りを意識させることで、仕事のスピードを向上させる。一般的にはノー残業デーなどがこれに当たるが、望月社長は「退社時刻の宣言と実績管理」を有効な方法として挙げる。

まず毎朝必ず従業員には今日の必達退社時間を所属部署に宣言させ、その日の最後に退社時間を報告する。これを一週間続け、達成できなかった場合はその原因と改善策を立てるというものだ。

2つ目のポイントは「業務の標準化」。これは仕事自体を効率的に組み替えていくこと。まず長時間残業になりやすい仕事を把握し、改善策をワーキング・グループを作成して実行していく。

3つ目のポイント「制度の見直し」は、仕事の成果だけでなく、その過程や自身の役割責任を含めて人事評価を下すというもの。少ない残業時間で成果を達成した社員や、部下の残業時間を短縮させた管理職などに高い評価を与える。

「高い業績、高い人事評価を得たいがために長時間労働に頼ってしまうのはよくあることです。実際、高齢の経営者は成績が同じでも長い時間働いている社員の方を評価する傾向があるので、注意が必要です」(望月社長)

「中小企業だから」言い訳なくす

望月社長は、「大企業であろうと中小企業であろうと、この3つのポイントを順守すれば、成果は上がる」と語る。

しかし実態は、必ずしもそうではないという。それは望月社長が「遅れの法則」と呼ぶ現象が起きるためだ。

これまでの売り上げや成績を維持しつつ残業を減らそうという取り組みは、開始直後から右肩上がりで成果が出るわけではない。会社によっては1年以上かかったり、場合によっては仕組み変更に伴い逆に成績が落ちてしまうケースも珍しくない。

「この期間に挫折してしまう会社は少なくない。特に中小企業の場合、『結局こういうことは大企業じゃないとできない』と、自らに言い訳をしてしまうことも多い」(望月社長)

このような挫折を防ぐためにはどうすればいいのか。同社長が実践しているのが、「言い訳の谷を埋める」儀式だ。

取り組みを開始する前に、経営者とワーキング・グループの前で、望月社長が「今にも谷に落ちてしまいそうな人」の絵を描く。そして経営者自身にペンで線を引いてもらい、この谷を埋める作業を行ってもらう。

「これはあくまで、この先言い訳をしないと社員に誓うセレモニー。必ずしも同じことをする必要はありませんが、このような挫折を防ぐ取り組みも重要です」

◆残業を減らす3つのポイント

1.極限状態の有効活用
・締め切りを意識させ、仕事を効率化させる
・毎朝その日の退勤時間を宣言させ、達成できなかった場合は対策を取る

2. 業務の標準化
・残業削減のワーキング・グループで、長時間残業につながる仕事を把握し、改善策を立てる

3.制度の見直し
・仕事の成果だけでなく、その過程や役割責任を含めて人事評価する
・残業の多い社員が評価される風土を是正する(提供: リフォーム産業新聞 2016年10月18日掲載)

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