国の対策法も空き家増加に歯止めかからず

空き家対策の即効薬となるのは、住人がいなくなった家を取り壊してしまうことだろうが、そう簡単にはいかない。空き家の取り壊しにも費用がかかり、数百万円にも上るその負担が重荷となり空き家のまま放置しておく所有者もいる。

さらに、これまでは空き家を残したケースでは、固定資産税の減額措置を受けることができたことなどから空き家への対策が十分に進んでいなかった。また、空き家のうち、3分の2が現在の耐震基準が制定される1980年以前の建物のため、老朽化が進んでいる。さらに、空き家を賃貸として活用するにも、改築して耐震基準を満たさなければ、借り手を見つけるもの困難だ。

こうした空き家が増え続ける状況に、国も対策に乗り出している。15年5月には空き家対策特別措置法を施行。この法律により、倒壊の危険性のある空き家は住宅向けの固定資産税減額対象から外れ、市区町村が家屋取り壊しなど強制撤去し、所有者にその費用を請求できるようになった。

この措置により、秋田県大仙市が空き家の解体を実施し、解体撤去費用を所有者に請求する方向で動きを見せている。空き家対策法は、市町村が空き家の現状を把握するのには一定の効果をもたらしたが、一方で取り壊しの費用を回収できないリスクもあり、自治体の財政負担も大きく、抜本的な空き家を減らす有効な手立てとしては機能していない姿が浮かび上がった。

「空き家バンク」の効果は?

空き家の取り壊しが効果的に進まない場合、新たな住人に住みついてもらうのが有効な対策として、全国各地で空き家のデーターベースを管理する「空き家バンク」制度の導入が進む。

千葉県袖ケ浦市では、16年11月より空き家バンク制度をスタートさせる。同市の調査によると、市内の空き家物件のうち、7割程度が入居して活用できる状態であったことから、同制度を導入して新たな入居希望者に条件がマッチングする物件を仲介する。

この他にも、空き家を若者に活用してもらおうという取り組みも進んでいる。入り組んだ谷戸の地形が特徴的な神奈川県横須賀市。同市では、空き家に入居し高齢者の生活をサポートする代わりとして、家賃を一部補助する制度を設けた。この制度を活用して関東学院大学が追浜谷戸・空き家プロジェクトを展開。

リノベーション費用の3分の2を、同市の空き家リフォーム補助から助成を受け、リーズナブルな家賃の学生向けシェアハウスに生まれ変わらせた。こうした取り組みも空き家の有効活用の1つとして注目を集めるが、右肩上がりで増え続ける空き家を減少させるのにどれほど寄与するかは未知数だ。

空き家と一口に言っても、立地する地域によって事情は異なる。IターンやUターンとして人気のエリアでは、新たな移住者の住宅提供に空き家を活用することが期待できるが、過疎化が進み、高齢化も加速するエリアでは、空き家が住める状態だとしても新たな住居者を見つけるのは困難だろう。後者のエリアでは、空き家の取り壊しにも自治体の負担が大きく、問題の抜本的な解決が見いだせないまま、空き家が増え続けていくのを傍観するしかないのだろうか。(ZUU online 編集部)