空き家活用,所有者負担なし,借り上げサービス
ルーヴィスは築50年の空き家をリフォームして借り上げた(写真=リフォーム産業新聞)

「持っている空き家を活用したい。でも改装資金がない」。そんな空き家所有者に対して、オーナー負担ゼロでリフォームを施し、借り上げて賃貸物件として運用するサービスが登場し始めている。空き家問題を解消するものとして、注目を集めている。

築50年の長屋を転貸

神奈川の工務店ルーヴィス(横浜市)が2015年1月から開始したのが、「カリアゲ」。その名の通り、空き家を借り上げて、自社負担で内装リフォームを行い、賃貸物件として転貸するというものだ。

対象となるのは、都内23区内にある築30年以上の物件。契約期間は6年で、転貸後の想定家賃の最大42カ月分をかけてリフォームする。物件オーナーには、想定家賃の10%が、空室であっても支払われる契約となっている。

実績はこれまでで12棟24戸で、平均月10万円で貸し出している。

福井信行社長は、「不動産会社に相談しても、『リフォームの必要がある』『この条件では賃貸として厳しい』と断られた方が利用している」と話す。

改装プランには、これまで多くの賃貸リノベーションを手掛けてきた同社の技が光る。ポイントは、「古さを生かし、機能は新築並み」。

東京都中野区にある築50年の長屋を借り上げた事例では、水まわり設備をすべて入れ替え、内装も一新。柱や巾木、ドア枠は傷が付いた状態のままで、昔なが らの日本家屋らしさを残した。 しかし、このようなリフォームをしたからといって、築古の空き家に借り主が現れるのだろうか。福井社長は、「リフォーム完 了前に入居者が手を挙げるケースもある」と言う。

「当社のリノベーションのテイストが元々好きな方だったり、そのエリアに住みたいと思っていても、好みの物件が出てこなかった人などから問い合わせが来たりします。現在借り上げている物件は、すべて入居済みです」

他事業との相乗効果も

不動産開発や中古再販事業を行うジェクトワン(東京都渋谷区)は、6月から空き家借り上げ事業「アキサポ」を開始した。

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同事業はルーヴィスの例と同様に、所有者負担なしで空き家をリフォームして、転貸。契約期間は5年で、家賃の1割をオーナーに支払う。

まだ開始したばかりの事業だが、来期目標は35件と、意気込みは強い。同社が狙うのは、既存事業とのシナジー効果だ。

「当社では、古い木造物件などを買い取り、地域に合わせた不動産開発を行っています。社会問題化している空き家に対して、『買い取る』だけでなく、『運用する』ソリューションを提示するため、このサービスを開始しました」(大河幹男社長)

また契約期間が終わった後は自社で買い取り、不動産開発の事業用地として転用することも可能だ。

NPO法人「空家・空地管理センター」(埼玉県所沢市)が提供しているのが「AKARI」。同サービスでは、管理の手間がなくなるとともに、家賃収入を固定資産税などの支払いにあて、空き家所有のデメリットを解消することを目的としている。

「これだけ社会問題になっているので、空き家を持っているということに、罪悪感のようなものを持っている人も多い。そんな方のために、空き家を所有しているという心理的負担を減らしたいと考えました」(上田真一代表理事)

同センターでは借り上げ期間を、その後賃貸として運用し続けるのか、それとも解体するのか、その決断の時間にしてほしいとしている。

空き家借り上げサービスが増えている背景には、空き家の増加とともに、所有物件を運用したいが、リフォームや管理に手間をかけたくないというニーズの上昇がある。このような空き家のデメリットを解消するサービスは、今後も増えそうだ。

空家・空地管理センターが手掛けた東京・三鷹の事例(写真=リフォーム産業新聞)
空家・空地管理センターが手掛けた東京・三鷹の事例(写真=リフォーム産業新聞)

(提供: リフォーム産業新聞 2016年9月20日掲載)

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