新興国の若者向けた金融リテラシー・プログラム「Power for Youth」を、UNICEF(国際連合児童基金)と提携で実施しているオランダのING銀行が、バーチャルゴーグルをとおして直接視覚に訴えかけるという、新たなデジタル金融リテラシーのアプローチ法を生みだした。

実際に金融リテラシーを学ぶことで、人生を180度転換させたネパールの青年の体験を体感するという手法をとっている点が、従来の教育法と大きく異なる。それと同時にプログラムの促進に向け、より多くの共感者からの支援を募る意図もある。

プログラム参加者の成功を視覚化 34万人の新興国の若者に金融知識を

「世界こどもの日」である11月20日に発表されたこのバーチャルビデオは、貧しさを当然の暮らしだと諦めてしまっている若者に、夢と希望だけではなく、実用的な知識を与えるための新たな金融教育アプローチだ。

「Power for Youth」は2005年、ING銀行とUnicefの提携関係とともに開始された。2018年までにネパール、インドネシア、フィリピン、ザンビア、モンテネグロ、コソボといった金融リテラシー教育がまったく普及していない国の若者33万5000人に、金融リテラシー教育をほどこすことを目標としている。

バーチャルビデオでは、10歳の時に父親を亡くし、16歳から大黒柱として家族を支えてきた19歳のネパール人青年が、「Power for Youth」に参加することでお金の大切さは勿論、賢明な運用法などを習得し、立派に事業を成功させた経過がドキュメンタリーとして描かれている。青年はプログラムへの参加をとおして学んだお金に関する知識が、「人生をまったく別のものへと変えてくれた」と、正しい金融知識の重要さを実感している。

このビデオはオンライン上で一般公開されており、自宅でバーチャルゴーグルを着用して体感することも可能だ。かつてはこの青年がそうだったように、「金融包括」という概念からほど遠い環境で暮らす若者たちの存在を世界に広く訴えかけ、より多くの支援を呼びかけている。

INGとUNICEFという組み合わせを考慮すると、「Power for Youth」で今後さらなるデジタル金融教育のアイデアが飛びだしてくると期待できる。

INGは今年8月、SNSで利用できる決済アプリをテスト開発したほか、10月には8億ユーロ(約915億240万円)を投じた大型デジタル改革を発表するなど、積極的にFinTech化に励んでいる欧州銀行のひとつだ。

意外なことにUNICEFも、ブロックチェーン・スタートアップなどを支援する「イノベーション・ファンド」を発足させるなど、慈善事業にテクノロジーを取りいれた新しい取り組みに意欲的である。

テクノロジーの進化はこうした予想もつかない分野で、様々な企業や団体が提携しあって社会に貢献できる機会を創出している。( FinTech online編集部

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