くらコーポ,回転寿司,
(画像=Webサイトより)

回転寿司チェーン「くら寿司」を展開するくらコーポレーション <2695> の決算が10月末に発表された。事前の予想通り、売上高も利益もよかったようだ。

前回筆者が執筆した「あきんどスシローの上場観測」に引き続き、回転寿司系の上場銘柄としての業績分析および収益推移の提示を行い、今後の動向を考察したい。

順調な業績推移

まずは2016年度以前の、過去3年分の業績推移を見てみよう。

決算書データを参照すると2013年次の売上高が「87,171百万円」,2014年が「95,635百万円」、そして直近の2015年が「103,572百万円」と順調に右肩上がりで推移している。

またEPS(一株あたりの利益)も2013年から2015年にかけて124.23円→144.77円→207.27円といった形で推移しており、好調だ。

また回転寿司業界と比較しても、業界シェア(売上高)は高い。上場予測をされているあきんどスシローの2015年度売上が1,350億円、くら寿司が続いて1035億円、かっぱ寿司(カッパ・クリエイト <7421> )の2016年が803億円、2015年が876億円という状況だ。経営方針などは当然各企業によって違うため一概には比較できないが、低価格競争により利益率が鈍化している状況下で、トップシェアに近い立ち位置にいるというのは大きい。

また業績予測(経常利益)に関しても「会社発表」および「コンセンサス(アナリストによる予想値の平均)」双方ともに上昇が見込まれており、決算への期待は強かった。

結果として、この「アナリスト予測」は的中することとなった、2016年度のくらコーポは売上高が「112,925(百万円)」、営業利益が「6,640(百万円)と双方ともに増加、順調な事業推移を行っていることを証明した。また今回の決算数値は自社が「業績予測」として出す数値をも上回っており、想定以上に事業がうまくいったことが伺える。

好業績推移は単価戦略と海外展開

くらコーポレーションの順調な業績推移を支えるのは「フェア」+「サイドメニュー」といいう店舗運営戦略と、近年活発化している「海外戦略」の2本柱だ。

季節ごとに旬の魚介を大々的にPRする「マグロフェア」などにより集客を行いつつ「ラーメン」や「カレー」、「どんぶり物」に「デザート」といった客単価を上げる商品を積極的に取り込み、店舗収益力を強化する。メニューは定期的に更新されるため、家族連れの固定利用客も多い。

飲食店に比較的空席が目立つ平日の正午から夕方の時間帯であっても「寿司」をメインにした食事客ではなく「サイドメニュー」を目的とした学生や主婦層を取り込むことにより、店舗利用率を押し上げている。

またここ数年、積極的に行っている海外への展開戦略も目を話せない。アメリカや台湾など、日本食ブームが根強い国に積極的に店舗出展を行い、業績を押し上げている。また漢字文化圏の国においては店名表記を日本語のままで行うなど、「ブランドイメージの定着戦略」にも注意を払っており、今後の店舗展開に対する意欲も見て取れる。

今後の事業展開と業績予測

これらより、今後の事業展開および業績推移は明るいとみて問題ないだろう。

もちろん企業という形で事業を行っている以上、確実に業績を上げ続けられるという保証はないものの、店舗運営および事業更新の推移をみていると決して「好業績に胡坐をかく」という経営ではなく、堅実な経営を行おうという姿勢がみえてくる。それは直近の10月末決算の結果からも見て取れる。

また業績改善に対する取り組みや新メニュー開発・店舗展開の展望についてもIRにて随時公開をしており、投資家へのPRにも余念がない。

外食系企業は安定した収益達成が難しく、投資対象としても悩まされる銘柄郡ではあるが、今後のくらコーポを「優良銘柄候補リスト」にいれて、じっくり観察していきたい。

土居 亮規
(AFP、バタフライファイナンシャルパートナーズ)