欧州の政府間でFinTech促進への新たな動きがでている。スイス政府はFinTech規制緩和に加え、特別ライセンスの発行に踏みきるほか、英政府は年間50万ポンド(約7051万円)の支援金と新たなネットワークの発足を発表した。

欧州委員会(EC)による「FinTech特別委員会(TFFT) 」も設置され、スタートアップ支援をとおして経済成長の拡大が期待される。

Brexitによる企業離れ防止策?強力な支援を受けるロンドンをスイスが狙う

スイス連邦参事会(SEC)はFinTech促進に向け、3方面からアプローチしていく意向を示している。クラウドファンディングでスタートアップの資金調達パイプを確保し、規制上のサンドボックスを設けることで成長の妨げにならない環境を提供する。

さらには特別ライセンスをスイス金融市場監督当局(FINMA) が発行し、スタートアップの自己資本規制比率を下げるなど、参入しやすいFinTech基盤の構築を目指す。

また仮想通貨スタートアップを支援するための、特別規制なども検討されている。SECは「新たな支援体制が、スイスをFinTech先進国へと押しあげることを期待している」と、テクノロジー改革にかける意気込みを見せている。

一方Brexitによる影響で、欧州のFinTech先進国としての座が危ぶまれる英国では、11月23日、フィリップ・ハモンド財務大臣が巨額の支援金に加え、中小企業を支援する目的で2014年に設立された英国事業銀行(BBB)をとおし、4億ポンド(約564億1195万円)を投資ファンドとして確保する計画を明らかにした。

UK FinTechの現状をまとめた投資家向け年度報告書の発刊も予定しているほか、アンチ・マネーロンダリング委員会も設置し、金融機関における電子IDによる認証システムのガイダンスなどを提供していく。

ジョージ・オズボーン前財務大臣によって具体化されたFinTechへの熱意は、今後も下火になる気配がない。支援体制を強化することで、EU離脱後の環境変化を懸念する金融機関やスタートアップの流出を防止する意図であることは明白だ。

英非営利組織管理団体、イノベート・ファイナンスのローレンス・ウィンターメイヤーCEOは、ロンドンが世界屈指のFinTech都市として成長を継続する条件として、「国際規模での優秀な人材確保」と「地元における技術者の養成」を挙げている。海外労働者向けの「国際事業ビザ」の導入なども影響してくるだろう。

ECはEU諸国のFinTech市場を分析し、最大限の利益を創出する目的でTFFTを設置。効果的な戦略を打ちだすとともに、欧州のFinTech促進に大きく貢献すると期待されている。( FinTech online編集部

【編集部のオススメ FinTech online記事】
金融業界のビジネスパーソンはFinTechの進行に危機感を持たなければならない
最新の株価指数「FinTech指数」とは?
ロボアドサービスを公開したウェルスナビ「より使いやすい見た目や操作感を……」
CEATEC開催 MUFGが初出展、AIを活用したサービスを展示
「FinTech化が進む金融業界で活躍できる人材とは?」