テレビや雑誌でも盛んに宣伝している「がん保険」。わざわざがん保険と銘打った保険があることで、通常の医療保険ではがんはカバーできないかのような印象を与えているが、そうではない。通常の医療保険でも、がんになってしまったときには規定の入院費や手術代が支払われるのだ。それにも関わらず、がんに特化したがん保険に入る意味は果たしてあるのだろうか。
本稿では、現在のがん治療の実情を紹介し、がん保険に入るかどうかを決定する方法について吟味していく。がん保険に加入するかどうか悩んでいる人はぜひ参考にしてほしい。
がん治療の実情
国立がんセンターによる2012年度に実施された調査によると、上皮内がんと頭蓋内の良性腫瘍以外のがんに罹患している患者は、全国で男性は50.4万人、女性は36.1万人いることが明らかになった。
男性では罹患率が高いものから胃がん・大腸がん・肺がん・前立腺がん・肝および肝内胆管となっており、女性では乳がん・大腸がん・子宮がん・胃がん・肺がんとなっており、女性特有のがんが上位に位置していることが分かる。
また、厚生労働省による人口動態統計の年間推計によると、2015年度の死亡者総数は約129万人であったが、そのうち悪性新生物によって死亡した人は約37万人であり、約28.7%の人ががんを直接の死因としてなくなっていることが分かる。
がんの治療期間
多くの人ががんで亡くなっていることは紛れもない事実である。早期発見すれば治療期間は短くなるが、がんの発見が遅れると治療期間が長くなったり、生存率が低くなったりしてしまう。
現在、罹患部位にもよるが、メットライフ生命が実施した調査によると、がんの診断を受けてから治療期間が半年未満の人は55.5%、半年~1年未満の人は14.9%、1年以上2年未満の人は9.5%であった。つまり約25%の人が1年以上治療しているのだ。
がんの治療費
同じくメットライフ生命の調査によると、初めてがんと診断されたときの平均治療費は46万円、交通費など医療費以外の出費は平均22万円であった。ステージが進行するほど治療費は高くなり、ステージⅣと診断された場合の治療費は106万円にも上ったことが分かっている。
がん治療は手術などの外科的治療や抗がん剤、放射線治療があり、保険対象内の治療だけでなく生活の質を向上させるための治療等もある。健康保険でカバーできない治療費に対しては、がん保険などの個人的な医療保険に頼らざるを得ないのが現状だと言えるだろう。
がん保険が必要な人、不要な人
がん保険に加入する方が良いのはどのような人と言えるだろうか。
貯蓄が充分でない人
多くのがん保険では、がんと診断されるとまとまった一時金が支給される。治療に専念することで収入が減る恐れがある方は、一時金があることで生活費や子どもの学費等の不安から少しは解消されるので、がん保険に加入する方が良いと言える。また、仕事に出かける日数と収入が正比例する人も、一時金と治療日数分の保険金が支給されるがん保険は必要と言えるだろう。
がんに不安を抱く人
特にがんにかかることが不安な人も、がん保険は必要と言える。がんは他の疾病よりも治療期間が長くなるケースが多いが、一般的な医療保険では入院費などに日数制限があり充分な保証を得ることができない可能性がある。がん保険は基本的に日数制限がないため、治療が長引いて治療した分の保険金を受け取ることができるのだ。
では、どのような人はがん保険は不要だと言えるだろうか。
幅広い医療保障を求める人
がんだけでなく幅広い疾病に対する保証を求めている方は、がん保険ではなく通常の医療保険に加入する方が良いだろう。がん保険はあくまでもがんに特化した保険であるため、他の疾病に罹患しても保険金を受け取ることができない。
貯蓄が充分にある人・不労所得が多い人
また、貯蓄が充分にある人や収入の多くが家賃収入などの不労所得に因っている人も、がん保険は必要ないと言える。仕事がないと収入がない人に役立つように一時金が大きく設定されていることががん保険の特徴であるので、仕事量と収入に相関が余りない人には無用と言えるだろう。
がん保険に加入するのは人それぞれ
約5%のがんは、遺伝要因もあることが分かっている。また、同じ食生活や住環境・ストレス環境で育つことで、がんになりやすくなることやなりにくくなることも否定できない。そのため、同居者等の近親者にがんに罹患した人がいる場合も、がん保険に加入しておくとよいかもしれない。
ただし、がん保険はほとんどが掛け捨て型であるので、本当に必要であるかを吟味することが大切だ。医療保険と加入するのか、それともがん保険単体で加入するのか、それとも医療保険自体の加入は不要と考えるのか。各自、しっかりと熟慮すべきだと言えるだろう。