50代以降はあえて新たな分野への挑戦を
藤原氏は「とくに難しいのは、三つ目の軸の見つけ方だ」と語る。
「二つ目の軸までは、『一つ目が人事で、二つ目が財務』というように、会社から与えられた仕事をきっちりとこなしていくことでも確立できます。しかし三つ目の軸については、今の仕事の延長線上で考えないほうがいい。
図のように、三つの軸が作る三角形の面積がより大きくなればなるほど、自分の希少性は高まります。三つ目の軸が二つの軸と近いところだと、三角形の面積が小さくなり、十分な希少性が生まれないのです。これまでやってきたこととは思いっきりかけ離れたことに挑戦することが大事です。
そのためには、一度会社から離れ、コミュニティでの活動や被災地支援、最貧国の子供たちを支える取組みに参加するなど、会社以外の活動に目を向けるといいでしょう。そうした活動から、これまで取り組んできたこととは大きく異なる『自分がやりたいこと』や『やるべきこと』が見えてくるものです」
40代で軸がなくても諦めることはない!
読者の中には「自分はもう40代だが、三つ目の軸どころか、二つの軸さえまだ確立できていない」と心配する人もいるかもしれない。そうした人に対して藤原氏は、「諦めることはない」と話す。
「自分の強みは何か、まずは棚卸しをやってみましょう。実は気がついていないだけで、ある能力がもう『100人に一人』のレベルになっている可能性も十分あります。
自分の強みが『10人に一人』のレベルに留まっているなら、今からでも『100人に一人』のレベルに引き上げるための努力をすればいいだけ。場合によっては、会社に対して、自分の強みを伸ばせる仕事ができそうな部署への異動願いを出してもいいでしょう。
本気で取り組めば、一つの分野で100人に一人のレベルになるのは5年から10年で可能です。40代からでも意識を切り替えて一つずつ軸を足していけば、50代で100万人に一人の人材になることができます。40代どころか、50代からだって間に合いますよ」
藤原和博(ふじはら・かずひろ)教育改革実践家
1955年、東京都生まれ。78年、東京大学卒業後、〔株〕リクルートに入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任。メディアファクトリーの創業も手がける。93年よりヨーロッパ駐在。96年、同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校の校長を務める。08~11年、橋下徹大阪府知事特別顧問。14年から佐賀県武雄市アドバイザー。16年から奈良市立一条高校校長。『藤原先生、これからの働き方について教えてください。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、著書多数。(取材・構成:長谷川 敦 写真撮影:長谷川博一)『
The 21 online
』2016年10月号より)
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