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(写真=PIXTA)

米国の名門イェール大学がオルタナティブ投資(ベンチャーキャピタル、企業再生ファンド、ヘッジファンド、金、不動産など)を活用して資産運用で成功しているということが伝えられるなど、昨今、オルタナティブ投資が注目されている。

大学は、一般的に授業料収入を主たる収入源としそれを運営経費に充てているが、経営基盤を安定させるために、寄付金などで集めた資金を原資にして基金を保有・運用している。イェール大学では、基金の運用において古くからオルタナティブ投資に力を入れ、年金基金など他のファンドよりも、優れたパフォーマンスを挙げてきた。

オルタナティブ投資は投資先が多様

オルタナティブ投資とは、資金運用の形態を表す言葉である。近年、年金基金や大学基金といった巨額の資金を運用する運用会社から注目を浴びている。

これまで多くのファンドでは、資金を運用するにあたり、主な投資先として株式や債券を選んできた。伝統的投資手法と呼ばれるこれらに対して、オルタナティブ投資と呼ばれる資産運用方法は、投資対象を広げたものだ。具体的には、ベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ、企業再生ファンド、ヘッジファンド、インフラ、穀物、エネルギー、金、不動産などさまざまな分野が対象になる。

オルタナティブ投資の特徴を3つご紹介しよう。

投資期間が長期スパン

株式や債券と比較して、これらの投資対象の特徴として、投資期間が長期にわたるということが一つ目に挙げられる。

たとえば、ベンチャーキャピタルは将来有望なスタートアップ企業に投資し、企業価値を増大させ、株式上場や他の事業会社への売却によって資金の回収をし、利益を上げる。一方、企業再生ファンドは、経営が悪化した企業を安値で買取ったり、上場廃止させたりした後、経営再建で企業価値を回復させ、再上場や他の事業会社への売却によって資金を回収し、利益を上げる。インフラ投資にしても不動産投資にしても、成果を上げるまでに期間は一般的に長い。

伝統的投資手法との相関性が低い

オルタナティブ投資の投資対象の二つ目の特徴として、一般的に株式や債券といった伝統的投資手法との相関性が低いということが挙げられる。たとえば、2007年から2009年にかけて米国で起こった、世界金融危機では相関性の低さが顕著に見られた。金融危機として世界中に広がり、主要株価指数は軒並み急落したが、金をはじめとするコモディティの下落幅は株式などに比べて低かったのだ。また、株価指数に先立ち、いち早く上昇に転じたのも金価格であった。現在では、世界の主要な年金基金や大学基金の多くが、運用資産の一部をオルタナティブ投資に振り向け、リスク分散をおこなっている。

絶対リターンを追求

オルタナティブ投資の三つ目の特徴は、絶対リターンを追求するということである。

伝統的投資で運用される投資信託などでは、ダウ平均株価や日経平均株価などの市場平均と比べた場合の騰落が、ファンドの成績を見る上での判断材料になる。この市場平均をインデックスと呼ぶ。仮に株安によってファンドの基準価額が下がっても、インデックスに比べて同期間の値下がり率が低ければ、相対的な意味でパフォーマンスは悪くないと解釈する。ファンドマネージャーの報酬も、基本的にはインデックスに比べて何%上回ったか、あるいは下回ったかによって決まる。従ってファンドマネージャーにとっては、株が安くなった局面では、インデックスを下回らない運用ができればよいので、積極的に利益を生み出す行動を取るケースは少ない。

これに対し、オルタナティブ投資では絶対リターンという概念を取り入れている。どんなときであれ、資産価値が上がらなければパフォーマンスが良いとは判断されない。このため、購入後の値上がりを待ち、利益をあげることが基本的な戦略である株式運用においても、場合によって売りポジションを取る場合がある。売りポジションを取ることにより、株価が値下がりする局面でも利益を上げることが出来るからだ。

絶対リターンの概念と密接に関連するのが成功報酬という考え方だ。ヘッジファンドは、伝統的投資を基本とする一般的な投資信託とは異なり、固定の手数料のほかに、値上がり益の一定割合を成功報酬としてファンド側が受け取る。そのため、相場がどのような状況になろうと積極的に利益を生み出そうとするのだ。

個人投資家も参考に

オルタナティブ投資は、今まで一部の富裕層が分散投資として資金を振り向けたり、年金基金や大学基金など、巨額の資金を運用するファンドに用いたりすることが多かった。しかし、近年はETF(上場投資信託)の発達や、投資信託の種類の拡充により、多くのオルタナティブ投資を投資対象先として資金を振り向けることができるようになった。

個人の資産運用の選択肢になりつつあるオルタナティブ投資、ご自身の資産運用の中にも取り入れてみてはいかがだろうか。(提供: みんなの投資online

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