「一生懸命、頑張っているのに仕事が終わらない」「今日もまた残業か」、サラリーマンの中には、このような毎日を繰り返しては嘆いている人が結構多いのではないだろうか。「時間」に関するテーマは、ビジネス書の中でももっとも売れるネタのひとつとなっている。
「時間をつくること」が仕事の目的になっていないか?
時間がない人が、最初に考えることとは「効率」である。効率とは、使った時間に対してより多くのタスクをこなせることをいう。早い話がスピードのことである。
世の中には、とかく「時間を短縮して、より多くの業務をこなそう」という発想の人が多いが、人間は機械ではないから、それにも自ずと限界がある。もとはといえば、人々が躍起になって時間をつくろうと努力をしているのは、より多くの仕事をこなすことが目的ではないはずである。
本来は、より価値の高い仕事をしたいから時間が欲しいのであって、それはつまり、仕事における「効果」を狙いたいからに他ならない。
求めるべきなのは「効率」より「効果」
それでは、効果とは何なのかというと、具体的には「いかに成果を出すか?」ということである。要は、同じ時間をかけるのであれば、より多くのアウトプットを出すか、より質の高いものを提供するということである。
目標地点に早くたどり着こうとするのは、効率発想である。効率発想の人にありがちなのが、目標に早くたどり着いた場合に、それ以上追いかけるのをやめてしまい、力を温存しようとすることである。
たとえば、あなたも上司などから「今期はもう目標を達成したから、それくらいにしておけ。でないと来期がキツイぞ」というような声がけをされたことはないだろうか。そのような考え方になるのは、効率発想が「スピードを追求する」ことに重点が置かれているからである。
効果発想の場合だとこうはならない。なぜなら、効果とは「時間が増えればその分、出せる成果も多くなる」という考え方だからだ。よって効果発想の場合、早く目標に到達した時はそこで立ち止まるのではなく、新たな目標を設定し、さらに走り続けるのである。
時間をつくるための3つの方法
効果発想の人は、より遠くに飛ぶためにこそ時間をつくる。では、どうすれば時間をつくることができるのだろうか。筆者がサラリーマン時代に意識していた時間のつくり方とは、主に以下の3つある。
1つ目は「繰り返しの仕事を極力なくす」ことである。「繰り返す仕事」とは、すなわちルーティンワークのことだが、これをなるべく繰り返さなくてもいいような状態をつくる。たとえば、放っておくと毎日大量にくるメールを放置しておかずに、送信元に「いりません」などと伝えて、見るメールを最低限にすれば、その分返信も不要となり、時間を節約できる。
2つ目は「自分でなくてもできる仕事をなくす」ことである。最大限のアウトプットを出すためには、組織を最適化する必要がある。時間に対して生み出した価値で効果が決まる以上、「時給の高い人は時給の高い仕事を行う」というのが組織の考え方である。自分の時間給を考え、時給に見合わない仕事は下の者に振っていき、自分はより効果の高い仕事に集中するべきである。
3つ目は「経年劣化した仕事を撲滅する」ことである。時間が経つにつれて社内の業務も変わり、やる必要のなくなる仕事というのが必ず出てくるものだが、そうなっても惰性で不要な仕事をし続けてしまう人が多い。
たとえば、パソコンなども使っているうちにだんだん重くなってくるが、それは余計なものが内部でいろいろ動いているからである。時間をつくるためには、そうした不要な仕事を見つけて排除していくことである。
「時間がない」本当の原因は手放さないから
不要な仕事をなくすための方法のひとつとしては、自分が今、持っている仕事を常に「他人のもの」と思うことである。他人に渡すとなれば、当然、渡し方が問題となってくるし、そもそもやる必要のない仕事であれば、自分の手でにぎりつぶせばいい。
大半の人は、「仕事が多くて時間がない」といいつつ、その仕事を手放そうとはしない。多くの場合、それが時間がない一番の原因なのである。
もちろん、あなたに部下がいるとは限らないだろう。ひとりで仕事をしている場合もある。たとえそうであっても、きたるべき時のために、常日頃からこうしたことを考えておくのは大切なことである。誰かに仕事を渡すというのは、相手に生きる糧を分け与えることである。
中には「この仕事を渡してしまったら、自分のやることがなくなってしまう」と思う人もいるかもしれないが、心配することはない。いい話とは、余裕がある人のところにしかやってこない。だからチャンスが欲しい者は、常にスケジュールが埋まっていない自由な時間を追い求めるべきなのである。
俣野成敏(またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。