カントリーリスクの事例について

前述しました通り、カントリーリスクにはさまざまなものがありますが、最近の事例をいくつかあげてみたいと思います。まず自然災害関連のカントリーリスクになりますが、2011年にタイで発生した大洪水などもカントリーリスクの対象になります。タイは比較的カントリーリスクが低いと見られていることもあって、多くの日本企業も進出していますが、このタイの大洪水のようにあまり想定されていなかった事例もあることからも、カントリーリスクのリスクマネジメントがいかに難しいかということを痛感された経営者の方が少なくなかったという話を聞いたことがあります。

また、2009年~2010年にはギリシャ危機が発生しました。このギリシャ危機では、ギリシャ国内での赤字隠蔽が明らかとなりギリシャ国債が暴落したことから、ギリシャの国家財政が破綻して、国債が償還されないのではないかという不安が周辺国へ、世界中へと伝播したこともあって、ギリシャ経済が一時危機に陥りました。このような国家財政の危機(ソブリンリスク)もカントリーリスクの一つにあげられます。また、2011年にチュニジアで起こった反政府デモが周辺国にも波及して、混乱に陥りました。このように新興国の政治情勢の不安、政治の未成熟によってカントリーリスクが高まる場合もあります。その他、為替の変動など金融リスクに関連したカントリーリスク、国又は地域の経済低迷などによる経済リスクに関連したカントリーリスクなど、カントリーリスクの形態には様々なものがあり、近年においても決して珍しいことではなく、発生した場合の影響が大きいことから、海外投資を行う際には、カントリーリスクを念頭に置いておくことが望ましいと考えられます。


国家経済の 破綻 について

国家経済が破綻すると言うとそんなに頻繁に起こることではないというイメージを持っている方もいらっしゃると思いますが、近年においても2000年代前半のアルゼンチンや2010年代のアイルランドなどが実際に破綻しており、ブラジルも破綻寸前にまで陥ったことがありました。またアイルランドのように破綻直前まで経済収支が黒字であったにも関わらず、破綻した例もあることから、この国に限っては大丈夫と言う思い込みは危険であると言われています。国家経済の破綻とは、国が発行した国債が償還できなくなり、国債の利子や元本が返済されないこと(デフォルト)を言いますが、前述しましたように特にレアケースであると言う訳ではなく、可能性の違いはあったとしても、どの国にも起こりうることであり、一つの国が破綻すると連鎖的に破綻する場合もあると言われています。国家経済の破綻は、カントリーリスクの中でも金融市場に最も大きな影響を与えるリスクの一つであるため、特に注意が必要です。


個人資産の運用における注意点について

例えば、株式の株価が上昇するためには、国内の経済が盛り上がっている状況が必要となります。経済成長に関して言えば、一般的には先進国よりも新興国の方が高い経済成長を示しているケースが多く、またこれらの新興国はインフラ等の整備が未成熟なこともあって、将来的にも経済成長の可能性があると言えます。従って、投資先としても魅力があり、これら新興国の外貨建ての金融商品への投資には、経済成長が停滞している国の外貨建ての金融商品への投資に比べて、チャンスがあると言えます。

その反面、これらの新興国には政治情勢の不安、政治の未成熟等によるカントリーリスクが内在していたり、企業の情報開示制度が未発達などのため実体をつかみにくいと言うリスクも存在します。個人資産の運用においては、外貨建ての金融商品に投資する場合に、特にカントリーリスクについて注意する必要があります。外貨建ての金融商品とは、外国の通貨、株式、債券、投資信託などの金融商品のことです。例えば、外貨預金では、通貨価値の大幅な変動の影響を大きく受けるため、カントリーリスクが内在していると言えます。また、外国の株式、債券、投資信託などの金融商品についてもカントリーリスクの影響は小さくないと言えるため、発行国のカントリーリスクを把握して、充分に注意しておく必要があると言えます。

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