2000年から始まった公的介護保険制度。40歳になると被保険者として加入することが義務付けられ、65歳以上の第1号被保険者が自治体から要介護(要支援)認定を受けると適切なサービスを受けられるようになる制度である。

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(写真=PIXTA)

だが、医療保険と同じく、公的な保険だけで必要なサービスを十分に受けられるわけではなく、個人にかかる負担が少ないとはいえない。要介護度の度合いによっては自己負担額が高くなることもあるし、保険料も終生支払わなくてはならない。

そのような不安に応えるのが民間の介護保険だ。死亡したり高度障害になったりしたときに保険金が支払われるタイプのものや、60歳まで支払えば終身介護保険が適用されるタイプのものもある。どのようなものがあり、どのような条件で利用できるのか探っていこう。

介護保険の特徴とメリット・デメリット

民間の介護保険も、公的介護保険と同じく、要介護認定を受けてから支給される仕組みになっている。メリットは何といっても、介護が必要になったときに保険金を受け取ることができるということに尽きるだろう。民間介護保険の中には積み立て型のものもあるので、老後資金として介護保険を活用することもできる。

だが、要介護認定を受けられなければ保険金を受け取ることができないということもある。そうなれば、数年から数十年間支払った保険料が実質的に掛け捨てになってしまうというデメリットがある。介護保険に加入する際は、本当に必要な保険といえるのか、解約時の返戻金や満期返還金がどうなるのかといったことも調べておこう。

介護保険の適用条件と特定疾病の種類

民間の介護保険の適用基準は、ほとんどの場合は公的介護保険制度による要介護認定を受けることだ。公的介護保険制度によって認定される要介護度には、要支援1~2・要介護1~5の7段階があり、数字が大きくなるほど多くの介護を必要とする。保険が適用される要介護度は保険商品によって異なり、要介護2以上で受け取れるものもあれば、要介護4以上を求められるものもある。

また、要介護認定によって介護サービスを受けられるのは65歳以上の人(第1号保険者)だが、40歳から64歳の人(第2号保険者)も特定疾病にかかって要支援・要介護になった場合は公的介護保険の適用を受けることができる。加えて、民間の介護保険を利用できることもある。

この場合の特定疾病とは末期がんや関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患、糖尿病性の神経障害・腎症・網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症などの16の疾病を指す。

各社の介護保険を比較

いくつかの介護保険を比較してみよう。

長生き支援終身(東京海上日動あんしん生命保険)

要介護2以上に認定されると、介護保険金を一時金として受け取ることができる。健康で長生きした場合も、70・75・80歳もしくは80・85・90歳のいずれかで3回、健康祝金を受け取ることができるのも魅力だ。

介護保険(ソニー生命保険)

要介護2以上に認定されると、介護一時保険金に加えて介護年金を受け取ることができる。被保険者が高度障害状態になった場合は、それ以降の保険料の支払いが免除される。

2018年の介護保険制度改正による影響

3年に1度見直しが行われる公的介護保険制度。2018年の見直しでは、増え続ける介護費用を縮小するために、要介護1や要介護2など軽度の認定を受けた人については自宅改修費を介護保険の適用外にしたり、自己負担割合を増やしたりすることが検討されている。

また、現在は40歳からとなっている介護保険料の支払い年齢を引き下げたり、高額介護サービスの自己負担分を引き上げたりすることなども検討されている。公的介護保険の状況がますます厳しくなる中、民間の介護保険への注目も自然と高まっていくだろう。

介護保険を選ぶうえでの注意点

介護保険を選ぶのでならば、何が必要かを考えたうえで、それぞれの商品を検討する必要がある。たとえば、要介護状態になったときに手厚いサポートを受けたいのか、老後資金として利用したいのか、あるいは要介護状態になったときに一時金としてまとまった金額を受け取りたいのか、月々の年金として受け取りたいのかといった要素がある。

そのほかにも、死亡時に遺族が保険金を受け取ることができるタイプのものもあるが、これは介護費用として受け取れる額に比べると、月々の保険料が割高となるものが少なくない。家族にまとまったお金を残したいのか、月々の負担をなるべく軽くしたいのかといったことも考えておこう。

人生は先が見えないことの連続だ。もしものときに備える民間介護保険を選ぶには、保険金として支払う金額や受け取ることができる保険金額、保険金の受け取り条件などをよく吟味し、もっとも自分に適した商品を選ぶようにしよう。