2016年もあと数週間。今年のIPOを総括してみよう。会社数は12月8日現在で71社(REITを除く)。12月19日上場予定で期待のZMPは情報漏洩問題で延期となったものの、年内に駆け込みであと12社が予定されており、合計では83社になる見込みだ。2016年のIPOの成績と注目銘柄を振り返ってみたい。
2016年のIPOの勝率は80%、初値騰落率は69%高
今年のIPOはあと12社が予定されているために合計83社になる見込みだ。昨年の92社から9社減と市場予想の100社に届かなかった。
市場別では東証1部直接上場が8社、東証2部が5社、マザーズが54社、JASDAQが14社、名証2部が2社。IPOの65%がマザーズ市場だった。
IPO銘柄の勝率(初値が公募価格を上回った銘柄の比率)は、57勝13敗1分けで80%と今年も高勝率だ。ただ2015年の89%は下回っている。
初値の騰落率は平均で69%の上昇だった。やはり昨年の87%は下回った。一番上昇率が高かったTOP3は、4月19日のグローバルウェイ <3936> の4.7倍。2月24日のはてな <3930> 3.8倍、11月29日エルテス <3967> の3.6倍だった。3倍以上になった銘柄は5銘柄、2倍以上が14銘柄もある。
IPOのサイズでは、今年最大が10月25日のJR九州 <9142> 。上場に伴い公募売出する額(資金吸収額)は、4160億円。2位が7月15日のLINE <3989> で1328億円、3位が6月29日のコメダ <3543> の601億円。3銘柄とも東証一部直接上場だった。
安定株主好み--JR九州
九州旅客鉄道 <9142> は、政府保有株の民営化案件としては2015年の郵政3社以来のIPO。売出株数も1億6000万株と非常に多かった。日本郵政3社のIPOは大成功で公募価格を16%から33%上回る初値となったものの、その後の株価は初値を大きく下回っているためJR九州の売出には懸念も多かった。
上場承認時の想定価格は2450円。公募価格は2600円と想定株価の6%上で決まった。注目の初値は3100円と公募価格を19%上回り、政府保有株の売り出しは損しないというイメージを守った。
鉄道事業自体は赤字であり大きな成長を見込むことは難しい。他のJRと同様に駅周辺のホテル、マンション開発などの不動産事業や、駅ビルや駅ナカでの小売業、JRを利用した旅行業の拡大などが頼りだ。前期の非鉄道事業売上は419億円と鉄道事業の1692億円の25%程度。JR東日本 <9020> の非鉄道事業売上が鉄道事業の68%まで達していることを考えると、まだ九州には伸びしろがありそうだ。ただJR東日本に比べ営業地域の人口が少ない。
12月9日の引け値は3005円。初値から3%下でそれほど損している人はいない。成長株とは言えないJR九州ではあるが、業績は安定しており、配当利回りは1.3%程度と他のJR各社と比較しても遜色はない。九州に住んでいる人にとっては、JR九州の鉄道が5割引になる「鉄道株主優待券」などがつくことから、安定株主が多い銘柄になっていくことだろう。
ここ数年、毎年期待されていた--LINE
ここ数年、ZMPとともにIPOが毎年期待されていたLINE <3938> がついに上場した。日米同時上場という史上初のディールだった。資金吸収額自体は、日本と米国とでそれぞれ売り出したこともあり、親会社である韓国のIT系企業大手のNAVAR社の保有比率が高いこともあり1328億円だが、上場時の時価総額は1兆円とJR九州を超えている。時価総額ベースでは日米ともに今年最大のIPOだった。
上場承認時の想定株価は2800円。公募価格は3300円と想定株価の18%上で決まった。注目の初値は4900円と公募価格をさらに49%上回った。
赤字上場であり、承認時はBREXITの後で市場環境も不透明で、SNS先進国米国においてもツイッターなどSNS銘柄人気に陰りが出てきていることから、それほど人気化しないとの見方もあった。ただ、上場日の7月15日にはBREXITの後市場環境が一転し上げ基調になっていたこともあって初値は人気化した。
LINE関連銘柄と言われるアドウェイズ <2489> 、ネットイヤー <3622> といった銘柄が幅広く物色されたことでも市場の人気を盛り上げた。
LINEは、上場前の15年12月期は最終利益が76億円の赤字だった。LINEの各種コンテンツの売上や広告収入は好調に推移したが、課金による決済手数料やIP保有者へのロイヤルティが増加、事業規模拡大に伴うコスト増、関係会社評価損の計上もあって赤字だった。今期の通期予想は出していないが、16年12月期の第3四半期決算(1−9月)は53億円の黒字になっており、通期も黒字化の期待が高まる。
4900円の初値以降、一時3780円まで下げていたが、決算黒字化期待などで9月28日には上場来高値5230円まで上げた。ただ、12月9日引け値は4130円。初値から16%も下の位置にある。
日本のSNS企業として世界を代表する銘柄ではあるが、株価が上昇するためには、黒字の定着、無料対話アプリ以外のプラットホームの収益化が必須だろう。
スタバなどとは一線画す存在--コメダ
コメダ <3543> は1968年に名古屋で始めた喫茶店が始まりで、名古屋を中心にフランチャイズ展開で成長した。上場時に調達した資金と上場による知名度の向上により今後5年間で全国1000店まで伸ばす計画だ。コーヒーチェーンではあるが、スターバックスなどとは一線を画しており、コーヒーでなくくつろげるスペースを売っている。
上場承認時の想定株価は1960円。公募価格も想定価格どおりで決まった。初値は1867円と公募価格を5%割り込んでしまった。
成長市場のマザーズでなく、人気化しやすいIT・ネット関連でもなかったうえ、上場日が6月29日とBREXIT直後で市場環境が不透明だったことも影響した。IPO直後に、一旦2002円の上場来高値をつけたがそれ以降9月21日の1555円安値まで下げ続けた。その後反発しているが12月8日時点で1732円と、いまだに初値の7%下に位置している。
コメダの業績は売上・利益ともに1桁台の伸びではあるが、配当利回りは2.9%もあり、コメダで使える株主優待券ももらえる。下値はサポートされていると見てもよさそうだ。今後は、中期計画通りに積極出店を国内外で進め、成長路線に乗せられるかどうかが注目だ。
2016年、待ちに待ったZMPの上場延期は残念だったが、来年もどんなすごい会社が上場してくるのか楽しみだ。(ZUU online 編集部)
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