「フィンテック(FinTech)」 という言葉は、金融(Finance)」と「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた造語で、電子決済や仮想通貨で盛り上がりをみせる市況は、フィンテック2.0とも呼ばれる。

それに先駆けて、フィンテック1.0となる最初のブームをけん引したのがネットでの株取引のサービスだった。サービスの開始とともに設立が相次いだネット証券は、一時代を築きあげ、組織としての成熟段階に突入している。そこで今回はネット証券大手の役員を中心に会社の人員構成を各社Webサイトなどから調べてみた。

トップの平均年齢は52.5歳

1998年に松井証券 <8628> が国内で初めてインターネットでの株取引を始めると、ネット証券の設立が相次いだ。それまで対面販売が中心だった株取引をネット取引へと変革をもたらし、手数料が割安になるなど投資家が享受した利益も大きかった。

2000年代初頭のITブームの象徴ともいえたネット証券も、はや誕生から20年近くの月日が経ち、組織として変化により柔軟に対応できる新しい人材をどのように登用しているのか気になるところだ。

大手6社であるSBI証券、マネックス証券、カブドットコム証券 <8703> 、楽天証券、松井証券、GMOクリック証券の役員のうち、有価証券報告書などから年齢が判明したメンバーをまとめた。トップ(社長)を務める6人のうち、最高齢は松井証券の松井道夫氏で63歳。一方最年少はSBI証券の高村正人氏の47歳。各社の役員の年齢は以下の通り(生年月日は西暦、敬称略。Webで公開されている情報のみ)。

SBI証券

会長
北尾吉孝(65)1951年1月21日

社長
髙村正人(47)69年2月26日

常務
齋藤岳樹(50)66年12月1日
岩吉直樹(47)69年4月28日
轟幸夫(58)58年5月5日
時政和宏(-)
守田和盛(-)

取締役
川島克哉(53)63年3月30日
中川隆(53)1963年9月6日
本畑 弘人(-)
山﨑博志(-)
福士光徳(-)

【お詫びと訂正】公開時、SBI証券ではなくSBIホールディングスの役員情報となっておりました。関係者の皆様にお詫びして訂正いたします。

マネックス証券

会長CEO
松本大(52)63年12月19日

社長
勝屋敏彦(50)65年12月18日

副社長 COO
兼子公範(51)65年10月5日

副社長
田名網尚(62)54年9月11日

取締役
上田雅貴(53)63年6月3日
田村清(-)
桑島正治(61)55年1月2日
清明祐子(39)77年9月8日

監査役
中村友茂(55)61年3月3日
勝股春美(-)
佐々木雅一(53)63年9月26日

カブドットコム証券

会長
芦崎武志(58)58年2月9日

社長
齋藤正勝(50)66年5月13日

副社長
黒川修(56)60年11月16日

取締役
濱本 晃(56)60年5月19日
細見昌裕(57)59年7月20日
竹内朗(49)67年5月25日
長友英資(68)48年7月7日

専務執行役
眞部則広(57)59年10月11日
雨宮猛(54)62年7月14日
塚田正泰(56)60年8月10日
阿部吉伸(47)69年8月8日

楽天証券

社長
楠雄治(54)62年11月21日

副社長
髙澤廣志(56)60年6月13日

取締役
木目田裕(49)67年9月26日
穂坂雅之(62)54年7月31日
山田善久(42)64年4月17日
永田俊一(72)44年2月16日

監査役
小川秀夫(-)
髙橋洋(59)57年5月11日
西川義明(-)

松井証券

社長
松井道夫(63)53年3月22日

常務取締役
今田弘仁(51)65年2月4日
森部隆士(49)67年9月2日
和里田聡(45)71年6月16日

取締役
佐藤邦彦(45)71年2月5日
鵜澤慎一(43)73年7月19日
雑賀基夫(46 )70年8月11日
井川元雄(66)50年1月3日
安念潤司(61)55年8月12日

監査役
矢島博之(62)53年12月30日
望月泰夫(60)56年5月28日
甲斐幹敏(65)51年7月7日

GMOクリック証券

会長
高島秀行(48)68年7月26日

社長
鬼頭弘泰(49)67年7月17日

常務取締役
高野修次(54)62年8月31日
山本樹(41)75年5月14日

取締役
谷口幸博(-)
唐澤利行(-)

監査役
中村稔雄(-)
谷口郁夫(-)
熊谷文麿(-)

創業時は30代で代表就任も

役員の年齢一覧をみて、大企業の役員とそれほど年齢に大きな開きがないという印象を受けた人もいるだろう。

創業時から代表を務めるトップに絞って、各社の沿革をさかのぼると、少し違った背景が浮かび上がる。

6社のうち、マネックス証券の松本会長は、マネックス証券の前身であるマネックス・ビーンズ証券会社が2005年に設立された時に社長に就任し、当時は42歳という若さだった。カブドットコム証券は、イーウィング証券と日本オンライン証券が2001年に合併してできた会社だが、齋藤正勝社長は、当時35歳で社長の座に就いた。

またGMOクリック証券の高島秀行会長も2005年の同社設立時には社長として、その船出を37歳で託されていた。

対面販売が中心で、割高な手数料を稼ぎの柱としてきた証券会社に立ち向かい、株取引に新たな旋風を巻き起こしたネット証券だったが、組織が成熟するにつれて、人材も硬直化されつつある傾向がうかがえる。また女性が少ない印象も受けるのではないだろうか。

創業時は若くて勢いのある経営者としてフィンテックをリードしてきたが、今やスタートアップの挑戦を受けて立つ側になっている。ネット証券大手もビジネスモデルが確立して、組織が成熟するなか、新しい人材の登用に扉を開くことも、かつての勢い再び取り戻す一助となるのかもしれない。( FinTech online編集部

【編集部のオススメ FinTech online記事】
金融業界のビジネスパーソンはFinTechの進行に危機感を持たなければならない
最新の株価指数「FinTech指数」とは?
ロボアドサービスを公開したウェルスナビ「より使いやすい見た目や操作感を……」
CEATEC開催 MUFGが初出展、AIを活用したサービスを展示
「FinTech化が進む金融業界で活躍できる人材とは?」