ANAホールディングス <9202> とエイチ・アイ・エス <9603> は2016年12月1日、宇宙輸送インフラの構築を手掛けるPDエアロスペースとの3社間で10月28日に資本提携したことを発表した。民間主導による宇宙機開発を推し進め、宇宙旅行をはじめとする宇宙輸送を事業化することが目的だ。徐々に期待感の高まりつつある宇宙ビジネスだが、本格化に伴って関連銘柄の動きにも一層の注視が要求されている。

「宇宙旅行」も夢の世界から現実のものに

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(写真=PIXTA)

PDエアロスペースは、低コストで利便性の高い宇宙輸送インフラの構築に向けて事業展開している企業だ。現在、世界初となるジェットエンジンとロケットエンジンを切り替えることの出来る「次世代エンジン」や、「完全再使用型弾道宇宙往還機」を開発中だという。ANAホールディングスとエイチ・アイ・エス両社が、PDエアロスペースによる2023年12月の商業運航開始に焦点を合わせていることがうかがえる。

注目を外せない宇宙ビジネス関連銘柄

ANA HDとエイチ・アイ・エスの2銘柄以外にも、にわかに活気を帯びてきた宇宙ビジネスに関連して、今後の動向から目が離せない銘柄も多い。ここでは以下の8銘柄を挙げたい。

1. キヤノン <7751>

キヤノン子会社のキヤノン電子は、JAXAのミニロケット開発チームに技術者を送り込んでいる。このミニロケットは、直径52センチメートル、全長10メートル弱と電柱並みの大きさで、衛星を打ち上げる機体としては世界最小になる。打ち上げ費用が主力ロケットの10分の1以下で済むため、衛星写真の撮影や通信に使う超小型衛星を運ぶ手段として活用が期待されているという。

キヤノン電子はデジタルカメラなどの設計・生産手法を応用し、最適な調達部品の選択や制御機器の軽量化を推進。宇宙空間でのロケットを切り離したり、機体の向きを変えたりするシステムを構築している。なお、燃料噴射装置などの本体部分はIHI <7013> の子会社、IHIエアロスペースが担当している。

2. 三菱重工業 <7011>

商業ロケットに関しては、三菱重工業のH-IIBロケットが2009年9月11日の1号機から5号機まで、すべて打ち上げに成功しており、高い信頼性を誇っている。2016年12月9日には、宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機を搭載した6号機の打上げに成功、安定ぶりを示した。

3. 三菱電機 <6503>

三菱電機は人工衛星本体をはじめ、衛星の運用に欠かせない地上管制設備や大型望遠鏡に至るまで、幅広く事業を展開している。人工衛星は既に50機以上の製造を担当したほか、人工衛星に搭載する機器の提供を含めて450以上の衛星プログラムにかかわってきた。とりわけ準天頂衛星システムという、日本で常に天頂付近に1機の衛星が見えるように、複数軌道面に衛星を配置するシステムは、高精度の衛星測位サービスとして高い評価を得ている。

4. NEC <6701>

NECも宇宙ビジネスは深いかかわりを持っている。その基礎となっているのは、長年にわたるバス機器開発のノウハウだ。代表例としては、JAXA小惑星探査機「はやぶさ」に搭載された「イオンエンジン」が挙げられるだろう。イオン化した燃料の高速噴射で推進力を生み出す人工衛星用の推進装置である「イオンエンジン」は、同じ推進力を生み出すために必要な燃料が他のエンジンよりも少なくてすむことから、長期間の運用が求められる静止衛星や深宇宙探査機向けの推進装置に適している。

5. カーリットホールディングス <4275>

カーリットグループは創業者の浅野総一郎によるカーリット爆薬の技術導入以来、ロケット燃料や発炎筒などの分野で日本をリードしてきた。2018年には創業100周年を迎えるという長い歴史を持つ。H-Ⅱロケットの打上げにも欠かせない、ロケットの固体推進薬の原料である過塩素酸アンモニウムは、宇宙ビジネスの発展とともに必然的に市場の拡大が見込まれている。

6. 明星電気 <6709>

明星電気は、人工衛星に搭載された太陽電池パドルやアンテナの展開の様子を撮影する「衛星搭載モニタカメラ」や、小型衛星に搭載する「GPS受信機」など、衛星向けの機器を数多く事業展開している。JAXAの衛星にも豊富な搭載実績を持ち、典型的な「宇宙産業」としての伸長を続けている。

7. 神島化学工業 <4026>

窯業系の不燃内外装建材を主力としている神島化学工業は、宇宙ビジネスの拡大とともに発展が期待できる素材産業だ。人工衛星から太陽エネルギーを地球に送る「宇宙ソーラーパワーシステム」には、同社のレーザー素材が不可欠だという。

8. 日東製網 <3524>

衛星の軌道上にある「デブリ」と呼ばれる宇宙ゴミは、それ自体が使用中の衛星に衝突する危険を持つだけでなく、デブリ同士の衝突によってさらに多数の微小デブリを撒き散らす危険もある。日東製網は無結節網技術を活かし、JAXAと共同でデブリ除去システムに必須の資材である「導電性網状テザー」と呼ばれる、電気を通すひも状の網の開発に取り組んでいる。(ZUU online 編集部)