あらゆる分野で活用が進んでいるAIだが、投資、資産運用での活用ではロボットアドバイザー(ロボアド)を思い起こす人が多いだろう。たとえばお金のデザインの「THEO」(テオ)がその一例だ。三菱UFJ国際投信も、人工知能で資産運用を支援するロボアド付きのバランス型投資信託、「eMAXIS最適化バランスシリーズ」を設定している。
こうした中、「ロボアド」ではなく「AI投信」をヤフー <4689> のグループ会社が設定することになった。同社がビッグデータを提供、Magne-Max Capital Management(以下マグネマックス キャピタル マネジメント、大阪市)が開発した人工知能運用モデルを活用、アストマックス投信投資顧問(以下アストマックス投信)が設定、運用する公募型投資信託「Yjamプラス!」だ。
投資・資産運用分野でも進むAI活用
冒頭で述べたように、今回の「Y jamプラス!」は“ロボアド”ではなく、AI投信。違いを簡単に説明すると、ロボアドは投資家にいくつかの質問をしてリスク許容度をはかり、その人にあったポートフォリオをつくってくれるというもの。Yjamプラス!はAI(人工知能)が運用そのものに携わる、株式を投資対象にした公募型投資信託だ。
AIが運用するとは一体、どのようなことだろうか。これはヤフーのニュースや検索キーワードなどで得たビッグデータをもとに、“市場のゆがみ”を見つけ出し、投資するというもの。具体的にはデータをもとに確率計算を行い、株価が上がりそうな銘柄を買い(ロング)、低迷しそうな銘柄を売る(ショート)ということだそうだ。「上がりそうな株を買う、下がりそうな株を売る」と書くと当たり前のように聞こえるし、簡単なようだが、これがなかなか難しい。
アストマックス投信の大久保和彦氏によると、「こうした市場のゆがみは『マーケットアノマリー』と呼ばれます。たとえば『年後半に投資するより年前半に投資するほうが収益率が高い』といったものです。株式投資をしている方なら誰もが耳にしてご存じだと思いますが、こうした市場の傾向、規則性、投資家のくせを見つけ出して収益源にするわけです」という。
人間のファンドマネージャーには休みが必要だが、AIは休む必要がない。市場や企業について調べたり投資判断をしたりといったことに常に取り組めるのだ。
AIの投資戦略とは?
投資信託には、それぞれ定められた運用方針やそれに基づく投資戦略がある。Yjamプラス!のAIがとる当面の投資戦略とは、「スター発掘モデル」と「確率的モテ期予測モデル」だ。
前者「スター発掘モデル」とは、「すでに目だっている『今のスター』ではなく、これから花開ききそうな『将来のスター』を見つける」というものだ。たとえばしばらく注目されていなかったが、アナリストが目標株価を上方修正した場合。このイベントをとらえて買うわけだ。
後者の「確率的モテ期予測モデル」とは、「人にある『モテ期』が企業にもある」という想定にもとづいている。株のモテ期とはつまり株価が上がる時期。ヤフーにあるニュースや天気、掲示板の情報などをもとに、いつごろモテ期が来そうかを予測するわけだ。
こうしたモデルを確立させたのがAI、アルゴリズムの研究者や金融市場の研究者らで構成されたマグネマックス キャピタル マネジメント。ヤフーは昨年11月、同社の株式を70%取得し子会社化している。
実はアストマックス投信にもヤフーは今年10月に出資、33.4%の株を保有している。前出の大久保氏はヤフー社員。アストマックス投信と連携しながら、この商品の立ち上げから関わってきたが、本投信の設定、発売を目前に控えた今秋、ヤフーから出向した。ここでもヤフーの本気度がうかがえる。
本投信に限らず、電子マネー・Yahoo!マネーも提供するなど金融事業に力を入れているヤフー。こうした動きに対して大久保氏は「ヤフーが提供するビッグデータがあってこそ、期待度の高い投資が実現できるのだと思います」としたうえで、「『課題解決エンジン』というミッションを掲げるマルチビッグデータカンパニー・ヤフーだからこそできる、ヤフーでしかできないやり方で、『資産運用は小難しいから、本当はやりたいけどやらない』という方が多い現状を変えたい。この商品が目指すのは、『お金に働いてもらう楽しさをすべての人に知ってもらうこと』です」と語る。
販売は福岡フィナンシャルグループの4社で行われており、現在募集中。12月20日に設定、運用開始される。( FinTech online編集部 )
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