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(写真=Rob Wilson/Shutterstock.com)

映画「海賊と呼ばれた男」が公開中だが、その国岡商店のモデルとなった石油元売り2位出光興産が、5位の昭和シェル石油の株式を取得するなど、両社は経営統合に向けて進みだしている。出光興産の2016年度見通し売上高3兆2600億円、昭和シェルは1兆6800億円だ。

また石油元売り首位のJXホールディングス(2016年度見通し売上高8兆円)と国内4位の東燃ゼネラル(2兆1000億円)は経営統合を発表し、12月21日にそれぞれ臨時株主総会を開き経営統合を賛成多数で承認。来年4月には「JX東燃ゼネラルホールディングス(HD)」(売上高合計10兆1000億円)として国内ガソリン販売でシェアを50%超える巨大企業が発足することになる。

石油産業再編の動きの背景や、再編によって石油業界地図がどう変わるのだろうか。

企業再編への動き

国内のガソリン需要は少子高齢化による人口減や、エコカーの普及で年2〜3%ずつ減少を続けており、30年には現在よりさらに2〜3割減るとの試算もある。元売り各社は石油の精製能力が需要に対して過剰状態となり、ガソリン価格の値下げ競争に陥っているのが現状だ。

また今年4月に始まった電力小売りの全面自由化がスタートしたことを受け、エネルギー産業のあり様は大きく変わることになる。石油業界としては、石油事業をコアにしつつ、電力・ガス事業への参入を行うことで「総合エネルギー産業化」へと目指して動いている。

そんなな中、政府は2009年、製油所の再編を促す「エネルギー供給構造高度化法」を成立させ、これにより経済産業省は2014年6月、石油元売り各社に対して2017年3月末までに生産能力の1割を削減するように促している。

エネルギー供給構造高度化法とは、国内で使用されているエネルギーの大半を供給する、電機やガス、石油事業者と言ったエネルギー供給事業者に対して、海外に依存する石油エネルギー依存度を低くするために、非化石エネルギーの利用と、化石エネルギー原料の有効利用を促す措置である。

また企業側もこうした背景を受けて、経営基盤の強化を目指すべく再編の動きが加速している。
石油連盟木村会長は2016年の年頭所感において、経営基盤の強化を訴えたうえで、さらに構造改革・国際競争力の強化を主張している。

そのような中で昭和シェルと出光は2015年7月30日、経営統合の基本合意を、11月12日には統合の形態を合併とする基本合意を締結したことを発表したが、創業家の反対によって経営交渉は難航している。

しかし、12月19日、公正取引委員会は再編によってJXホールディングスと東燃ゼネラルの統合に対して、国内販売シェアの5割を握り、海外でも勝ち残れる統合新会社の発足を承認。承認の条件として、独占が起きないよう、国内の消費者が「不利な価格」を押しつけられない枠組みを求めたのである。それだけに、2強体制を認めたことによって、石油業界全体の経営基盤を強化し、国際競争力の強化を目指したゴーサインだったとも見て取れる。

中国の影響、国際競争力の強化

公取委が、石油業界で国内50%超のシェアを容認したのは、中国などとの競争激化への対抗措置を意識した可能性がある。中国政府による独立系石油精製業者の燃料輸出規制枠を撤廃したことによる世界的な安値競争となるリスクが高まるため、価格競争のうねりが日本にも押し寄せることも考えられるからだ。

来春統合するJXホールディングスと東燃ゼネラル石油の時価総額を合わせると約1兆7000億円で、国内元売りでは群を抜く存在になるが、それでも米石油メジャー最大手のエクソンモービルの約44兆円、約10兆円を超える英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルの規模には程遠い。

国内の石油企業は国際競争力をつけるためにも、国内での経営統合を推し進める形で経営規模を拡大し、経営基盤を強化することで、海外事業への進出へと進んでいる。
日本の石油元売りは主に、石油精製・販売といった中流、下流事業であり、欧米メジャーが強みを持っている上流事業の資源開発への収益性は依然として低い。そのため、JXHDと東燃ゼネが統合して発足する新会社は、国内の石油精製・販売である中下流事業を合理化する一方、海外展開を目指した事業への投資を目指している。

コスモ石油の存在

こうした再編の流れの中で、大手元売り5社のなかで再編から取り残されたコスモエネルギーホールディングス(2016年度見通し売上高2兆3650億円)。国内ガソリン販売のシェアは10%程度にとどまる。

しかし、出光と昭和シェルの合併協議が行き詰れば、四日市製油所で事業提携したコスモと昭和シェルの合併説が再浮上する可能性もある。仮にコスモHDと昭和シェルが合併した場合2016年度見通し売上高で見ると、合わせて4兆450億円となり、一気に国内シェア2位に浮上する可能性があり、出光興産を上回る規模となることは否めないのである。

争点を握る出光のお家騒動

出光側の創業家による合併交渉への反対により、来年4月に予定されていた合併が延長されたことを受け、実質的なJXTGHDによる実質「一強」へとなった。出光創業家の反対は、出光・昭和シェルの経営統合へ向けた動きが先行き不透明となっている。当面はJX・東燃ゼネと出光・昭シェルの「1強」が先行する形になる。

いずれにしても創業家側が合併に向けてゴーサインを出さない限り、JXTGHDの1強体制が続くのか、2強体制によって石油業界の競争を促す形になるのか、もしくはまったく別のシナリオである昭和シェルとコスモ石油の合併案の浮上へとつながるのか。出光創業家の決断に委ねられている。(ZUU online 編集部)

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