所有するアパートや賃貸マンションからの収益が増えてくると、次に考えるのは税金対策であろう。では、節税目的で資産管理会社を設立するにあたって、どのようなメリットがあるのか、またどのような点に注意を払うべきなのか検証してみよう。
資産管理会社を設立するメリット
資産管理会社設立の大きなメリットは節税だ。個人事業主だと各種控除や経費を除いた収益のすべてが課税対象になるが、法人にすれば会社と個人に収入を分散することで、より効果的な節税が可能になる。そこで、まずは所得(利益)に対する個人と法人の税率を比較してみよう。
・個人の税率
個人の所得税の税率は、課税される所得金額1,800万円超え4,000万円以下で40%(控除金額は2,796,000円)。4,000万円を超えると税率が45%になる(控除金額は4,796,000円)。
・法人の税率
資本金1億円以下の中小法人の場合、課税所得金額800万円以下の部分については19%で、800万円を超えた部分は23.4%(平成28年4月1日〜平成29年3月31日)となる。さらに中小法人(資本金1億円以下)は800万円以下の部分について軽減税率の特例(19%→15%)が適用され、平成29年3月31日までの事業年度が対象になる。
税率という点で見れば、最高税率が個人では45%であるのに対し、法人は23.4%(平成28年4月1日〜平成29年3月31日)と明らかに法人にすることでメリットがある。更に法人ではさまざまな経費が認められるため、最終的な利益を圧縮して税金を軽減できるメリットがある。
・役員報酬が控除対象になる
役員報酬は税務上損金として認められるので、オーナーに入る給与分を収益から減額することができる。役員報酬も所得控除が受けられ、一律に受けられる38万円の基礎控除と収入に応じて控除額が算定される給与所得控除がある。
平成28年分(平成29年分は内容が変更となるので注意)
660万円超1,000万円以下:収入金額×10%+120万円
1,000万円超1,200万円以下:収入金額×5%+170万円
1,200万円超:230万円(上限)
事業収益に対する役員報酬の比率は、法人税に大きく影響する。会社に残す分を多くすれば、それだけ法人税の課税対象額が増えることになる。役員報酬の比率を高くすれば会社の税金は安くなるが、オーナーの所得税が高くなる。従って会社の法人税と役員報酬の給与所得税のバランスを考慮する必要がある。
・個人にはない法人契約の生命保険
生命保険に法人契約で加入するメリットは、まず掛け金の全額、または一部を損益として計上できることである。保険の種類によっては損金計上できる割合が異なるので、加入時に税理士に相談して確認しておくべきだろう。貯蓄性のある保険であれば、契約者貸付制度が利用できる。申請すれば1週間程度で受け取れるので、突発的に資金が必要になった時に重宝する。ただし、解約返戻金の90%が上限であることに注意が必要だ。なお、貸付制度を利用しないものであれば、解約返戻金が90%以上の商品もある。また、実効税率(税金)を加味すると実質100%以上の返戻となるものも存在する。
資産管理会社を利用する3つの形態
・設立した法人名義で物件を取得する
不動産を取得するうえで、法人と個人で違うのは減価償却の扱いである。個人は赤字であっても全額を経費に計上しなくてはならない。一方、法人は損金計上できる減価償却の枠内であれば、任意で計上できる。
減価償却をしないで利益を残すか、逆に枠を超えた額を計上して赤字にするか、その時々の状況に応じて選択できる。もし赤字にしたくなければ、減価償却の額を調整して収支をプラスマイナスゼロにすることも可能なのだ。
・設立した法人とサブリース契約を結ぶ
個人が所有する物件の管理を第三者のサブリース会社に委託すると、賃料収入は本来の金額より少なくなることが一般的だ。しかし、資産管理会社とのサブリース契約であれば、法人と個人に賃料収入が分散するだけで済む。また個人の不動産利益の一部を法人に移転させることによって、所得税額の圧縮を図れる場合もある。
・設立した法人を管理会社にする
サブリースではなく、個人所有の物件の管理全般を資産管理会社に委託する方法である。上記のサブリース契約のケースと同様、管理全般の業務を委託することにより、個人の不動産収益の一部を法人へ移転させる。個人の収入を減らすことに加え、不動産管理費という経費を増やし節税につなげる。
法人設立・運営は税理士に相談を
法人の税務・会計処理は複雑になるため、節税を主な目的とするのであれば投資税制に詳しい税理士の存在は必要不可欠となる。税理士と相談して、法人を設立するかよく検討することが大切である。(提供: みんなの投資online )
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