米国経済見通し,2017年
(写真=PIXTA)

くる年の米国の景気を占う重要経済指標の年末商戦が終わった。速報値では、2005年以来最高の結果との見方も出ており、2017年の米経済に大いに期待を抱かせている。

米クリスマス商戦は一般的に、11月第4木曜日の感謝祭明けの一大セールイベント「ブラック・フライデー」から、クリスマスイブまでの、1か月未満の期間を指す。全米小売業協会(NRF)によると、商戦初盤の11月末、感謝祭を含む週末の平均消費額は軟調で、前年を3.5%下回っていた。

今年はクリスマスが日曜日であったため、ウィークデーにクリスマスがやってくる他の年に比べて商戦の期間が数日長く、買い物客は「まだ時間がある」と余裕の構えだった。ところが、終盤で「もう、プレゼントの買い物の時間がない」とあわてた消費者による売り上げがぐいぐいと追い上げたわけだ。

調査会社リテールネクストは、12月17日から24日までの1週間の実店舗売り上げが前年比6.5%も増加したと発表する一方、米クレジットカード大手マスターカードのデータによれば、家具や男性用衣類が好調で、年末商戦の小売売上高は予想の前年比3.8%増を上回る4%増加になった。

これらの数字は全体像をあらわすものではなく、まだ断片的な情報に過ぎないし、そうした一部の好調がトランプ次期大統領の経済政策への米国民の期待に支えられていたかも、今のところ明確に示されていない。それでも、米小売全体の堅調な伸びは明確に示唆されている。

調査会社カスタマー・グロース・パートナーズのクレイグ・ジョンソン氏はロイター通信や『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙に対し、「今年の年末商戦は前年比6.1%の伸びを記録した(金融危機以前の)2005年以来で最も好調であり、2016年における前年比の伸びの予想を4.1%から4.9%に上方修正した。この勢いは年始まで続く」と語っている。ちなみに、NRF が報告した2015年の前年比の成長率は、3.2%にとどまっていた。

ジョンソン氏のコメントを補強するのが、12月27日に発表された全米産業審議会(コンファレンスボード)の12月の消費者信頼感アンケートの結果だ。それによると、5000人という大きなサンプルの消費者マインドを指数化した指標が、11月の109.4から113.7へと急上昇した。これは2001年以来ベストの数字であり、CBSニュースの『マーケットウォッチ』は、「米経済の回復と、高齢者を中心に高まるトランプ政権への期待を反映している」と分析している。

専門家の事前予想を上回る商戦の好調に関して『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の分析記事は、「英国の欧州連合(EU)離脱や米大統領選で予想を大きく外した専門家は、またまた大きく外してしまった」と辛辣だ。

くる年の勝者はアップルとアマゾン?

この期間中、米小売業界の年間売上の2割が叩き出されるため、クリスマス商戦の売り上げ傾向を分析すれば、各小売業者や商品製造元の成績ばかりではなく、米経済全体の先行きまで見通せるといわれる。

2016年の年末商戦では、まずアップルの好調が鮮明であった。米携帯市場調査企業フラリーによると、12月19日から25日の期間中にアクティベートされた携帯電話の44%がアップル製品であった。独り勝ちの状態である。

一方、今秋の「出火スマホ」騒動ですっかり信用を落としたライバルの韓国サムスン電子製は同期間にアクティベートされた携帯の21%に過ぎず、アップルのスマホ2台が売れる間に、サムスンのスマホは1台しか売れなかった計算になる。「家族や恋人へのクリスマス・プレゼントのスマホはアップル」という概念が定着している。
2017年のアップル飛躍を予感させる出来事である。

2016年クリスマス商戦のもうひとつの勝者は、オンライン店舗であった。マスターカードは前年比20%近い売上の伸びを予測し、カスタマー・グロース・パートナーズも15%の成長を予想する。これを裏付けるように、米配送大手のUPSは、一般家庭向けの配送量が前年比14%増に当たる7億個になると期待を寄せ、ライバルのフェデックスも10%の伸びを予想している。

では、数あるオンライン業者の中で、勝ったのはどの企業か。米調査会社のスライス・インテリジェンスは、2016年の年末商戦のオンライン売り上げの半分をアマゾンが分捕ったと分析している。「アマゾン・プライム」などの優待プログラムで日ごろから消費者を囲い込んでいたことによる、圧倒的な勝利である。

対する実店舗の「敗北」は、年末商戦の始まりを告げるブラック・フライデーの実店舗の閑散とした様子からも、明らかであった。ほんの数年前までは、目玉商品が目当ての買い物客は半日や一日以上の行列もいとわず、我先に商品に殺到し、店内は押し合いへし合いの大変な「地獄図」になったものだ。

ところが今年は、行列は短く、普段に毛が生えた程度の混み具合でしかなかった。筆者が拍子抜けの様子の店員に聞いてみると、一様に「みんな家で(オンラインの)買い物をしてるのよ」という声が返ってきた。事実、いくらかの大手小売りチェーンが商戦の売り上げ目標を達成できなかったとのうわさが市場に流れている。

こうして2016年の米年末商戦を振り返ると、3つの大きな未来図が見えてくる。

2017年は堅調な消費に引っ張られて米経済が順調に成長すること。アマゾンを筆頭とするオンライン店舗がさらに躍進し、実店舗は苦戦・撤退が続くこと。そして米スマホ業界では、サムスン電子が長期にわたって今までの勢いを取り戻せないなか、今春発売予定の最新機能を盛り込んだスマホ、ギャラクシーS8でも完全な挽回はならず、米市場において「アップル対サムスン」の図式が薄れ、「アップル対その他」の構図が鮮明になってくることだろう。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

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