トランプ,米国,行動経済学,ダン・アリエリー
(写真=JStone/Shutterstock.com)

世界を驚かせたドナルド・トランプ氏の勝利を「予想外の結果」という一言で片づけてしまっては、永久にその謎が解明されないだろう。

数々の世論調査や専門家による予想が大はずれした背景を解き明かすには、行動経済学や心理学を用いて、大衆の行動にともなう心理や動機を分析してみると新たな発見があるかもしれない。

恐怖・不安は人間を不合理な行動に走らせる

心理学・行動経済学の権威として知られる米デューク大学のダン・アリエリー教授は、多くの米国民が抱えている「恐れ」が、トランプ氏の勝利を決定づけた要因のひとつだと米CNBCに語っている。

雇用市場、貧困問題、生活苦、医療費の値上がりなど、生活を揺るがす不安要因は後を絶たない。不安感や恐怖心は、本来人間に備わっているはずの「合理的な思考」を低下させる。追い詰められた人間の本能は、どんな不合理な手段を用いても恐怖の種を封印しようと試みる。不安や痛みを解消してくれる希望の光がさせば、例えその光がおぼろげでも向かってしまうものだ。

トランプ氏の戦略は、こうした人間の弱みをたくみに突いた大成功例だったということだ。

心理的リアクタンス