住宅セーフティネット制度,国交省,予算折衝
(写真=PIXTA)

2017年度予算折衝で、住宅セーフティネットの創設が承認を受けた。関連費用として27億円の予算案が閣議決定されている。

住宅セーフティネットとは、低所得者や高齢者、子育て世帯など住居に困る人たちに住居の安全を保障する社会制度だ。

従来は公営住宅など国や自治体が提供するのが普通だったが、近年は民間住宅の活用が推進され、全国的に問題となっている空き家対策を兼ねることが期待されている。

住宅セーフティネット制度とは

住宅セーフティネット制度は、経済的な困窮など、人の生活を脅かす危機に遭っても、最低限の安全を保障する社会制度の一環として、住宅困窮世帯に対して行われる施策のこと。戦後の復興期に創設された低所得者向けの公営住宅制度が基本となっている。

もっとも現代では、経済的に困窮している世帯だけではなく、高齢者、障害者、ひとり親世帯、DV被害者、災害被災者などに対象が拡大され安全かつ良質な住まいを提供することとされている。

制度としては単なる住宅の供給やあっせんだけでなく、一定の対象者に対して住宅ローンの金利を優遇したり、債務の保証、バリアフリー改修や民間賃貸住宅に対して助成したりと、市場では対応できないもの、供給が十分でないものを補完するものとして幅広く制度化されている。

住宅セーフティネット制度の経緯

住宅セーフティネット制度は1951(昭和26)年に制定された公営住宅法が基本だ。そして2007(平成19)年に制定された「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」が住宅セーフティネット法と呼ばれている。

公営住宅法での対象者は「住宅に困窮する低額所得者」(公営住宅法第1条)だが、住宅に困窮するのは低所得者に限らない。そのため、住宅セーフティネット法では、「住宅確保要配慮者」として、居住に適したバリアフリー化された住宅を必要とする高齢者や障害者、ゆとりある面積を必要とする子育て世帯、さらに被災者、失業者、ホームレス、新婚世帯、DV被害者など多様な属性の人が想定されることとなった。

住宅を供給する主体も、公営住宅法制定当時は、地方公共団体が基本。県営住宅や市営住宅、それに加えUR賃貸住宅があった。

人口の増加や高齢化などにより住宅確保要配慮者が増えたにもかかわらず供給戸数は限られていた。一方で民間の住宅事情はというと全国的に空き家が問題となってきた。

だが、高齢者や障がい者が住みやすいバリアフリー住宅は少ないし、保証人の問題などで入居を断られるケースが少なくなく、「住宅確保要配慮者」にとって適切な住宅が供給されていない。

そこで、高齢者や障害者、子育て世帯などの住宅確保要配慮者の入居を条件として家主にリフォーム費用を国が補助したり、家賃の一部を負担したりする「住宅セーフティーネット整備推進事業」がすすめられているのだ。

住宅セーフティネット制度の現状と今後

高齢化の進行で住宅確保要配慮者は増えている。さらに日本は高齢化と少子化によって人口の減少はほぼ確実となっており、現在でも問題となっている空き家問題は、今後さらに深刻化することが予想されている。

さらに首都直下地震や東南海・南海地震の発生も予測されており、震災時には住宅を失う人が多く発生することも想定されている。増え続ける住宅確保要配慮者に災害対応。これには全国平均で応募倍率5.8倍にも及ぶ公営住宅だけでは対応しきれないし、新たに公営住宅を建設するのは効率的ではない。

「住宅セーフティーネット整備推進事業」は、既存の民間賃貸住宅の質の向上と空き家の有効活用により住宅確保要配慮者の居住の安定確保に加え、災害時の公的利用の確保を目的として、改修工事費用の補助や家賃の補助を行っている。

2016年には、空き家に入居する子育て世帯や高齢者に最大で月4万円を家賃補助し、受け入れ住宅の持ち主には住宅改修費として最大100万円を配ることが決定した。子育て世帯や高齢者の生活を住宅面から支え、全国で約820万戸に達し、さらなる深刻化が予想される空き家問題の解決につながると期待されている。

高齢者や子育て世帯が入居しやすくし、入居後のサポート体制も整える必要がある。自治体で入居を希望する人の状況を把握する部局と、物件情報をもつ部局との連携、さらに入居後の見守りをする民間団体への支援を含めて「住宅セーフティネット法」の改正が検討されている。

住宅セーフティネット制度の課題

住宅確保要配慮者は高齢者や子育て世帯だけではない。生活困窮者に対しても住宅供給だけでなく入居後の生活のサポートが必要であるし、セーフティネットに頼らず自立を目指す人を支える仕組みづくり、就労支援としての住宅供給も検討されねばならない。

リフォーム代の補助や家賃補助が「ばらまき」との批判もあるなかで限られた予算でこれらを実現していく政策判断が求められている。(ZUU online 編集部)

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