市況との見比べ方から、「急落時の買い」まですべてわかる!

2016年12月12日、日経平均株価の終値はほぼ1年ぶりとなる19000円を回復。「トランプ相場」と呼ばれる最近の株高を背景とし、株式投資に関する注目が高まっています( 参考:【 テレ朝ニュース】 トランプ効果で? 投資セミナーに1万人超、長蛇の列 )。

株取引には大きく分けて「短期売買」「長期売買」の二つがありますが、ネットやメディアにある情報・ノウハウは短期売買について書かれたものが多く、長期投資に関するノウハウは(基礎的なものを除き)さほど多くありません。

そこで、長期投資を中心に総額1億円以上の資産を作り、 『「小売お宝株」だけで1億円儲ける法』 (以下、本書)の著者・坂本彰氏に、本書に書ききれなかった内容の補足や「そもそも、市況がよくないと長期投資はダメなんじゃ?」という身もふたもない疑問まで、さらに1歩踏み込んだ長期投資のノウハウをQ&A形式で伺いました。


[質問]
信用取引・空売りをしない「完全長期オンリーのスタイル」で投資をしているのでしょうか? そうならば、長期をベースに据えたうえでデイやスイングトレードも行なう「複合的なスタイル」にしない理由はなぜなのですか?

[質問の背景・理由・補足]
本書でもふれられているとおり、米大統領選や今年6月のBrexitといった「政治イベントによる相場急落時」が、長期投資にとって「絶好の買い増しチャンス」なのはわかります。でも、こうした相場変動は、中短期投資にとっても「手早く種銭を作るチャンス」でもあり、それをみすみす逃すのはもったいないように思います。


[回答]
私の投資スタイルは完全に長期のみ、一度購入したら最低でも半年は保有しています
。というのは、仮に保有後はじめての決算短信内容が悪くても、さらに3か月後の決算短信を見てから判断するため、必然的に長くなるからです。デイトレードはサラリーマン時代にやりましたが、まったく成果がでなかったのですぐにやめました。最初に学んだ方法がファンダメンタルズ分析(企業価値を調べる方法のこと)だったため、それを続けているという感じですね。

また、投資顧問業を始めてからは、自己で売買する株式に対して顧客と利益相反とならないよう「株式取得規約」も作成したため、完全に長期オンリーとなりました。

それから、 信用取引や空売りも一切なし です。たしかに、スイングトレードは急落時のショック安銘柄をつかむことができれば、短期で数十%の利益確定ができると思います。私の手法は非効率的な部分もありますが、(結果的にはならなかったものの)米大統領選や6月のBrexitが不景気入りの転換点だった場合、スイングトレードだと厳しい結果にもなり得るので、してきませんでした。


[質問]
本書のP.62~64に「(宝飾品などや高級品などを除いた)小売株には、景気変動は関係ない」と書かれています。ですが、「 みんかぶ 」や「 株探 」などで外食産業銘柄をランダムピックアップして5年チャートをみると、2012年末の政権交代を過ぎてから株価が騰がりはじめた銘柄がほとんどで、日経平均が低迷しているうちから上昇の兆しをみせている銘柄は数えるほどしかありませんでした。

また、64ページには「原材料を輸入することの多い小売株は円高のほうが収益にプラス」と書かれていますが、ドル/円の10年チャート(下図参照)とあわせてみると、ほとんどの銘柄における株価上昇の開始時期は、円安に転換してからでした。

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USD/JPYの10年[月足]チャート(Yahoo!ファイナンス 多機能チャートよりキャプチャ)
これらを見ると、小売り銘柄に対する景気の影響は外需銘柄や輸出関連銘柄と比較すれば小さいですが、それでも無視できる範囲ではないと思います。「関係ない」と言い切れるのはなぜですか。
[回答]
関係ないと言い切れるのは、株価ではなく「売上や利益」に対して
です。この点、本書の説明不足のため、勘違いされたら申し訳ございません。たしかに、個別銘柄の株価は日経平均や為替レートと動きが似てくるので、連動していると判断することもできますね。

一般に、 個別銘柄の株価は短期的には市況や景気によって、長期的には業績を受けて変化 していきます。しかし、現実には業績よりも日々の株価材料によるモメンタム(勢いや強弱のこと)の影響のほうが圧倒的に大きいので、純利益の伸びよりも、アベノミクスという全体の勢いによる押し上げ効果のほうが、短期的には株価に大きな影響を与えます。

もう一つの「為替と営業利益の関係」につきまして、ロイター社が公表した資料によると、非製造業の営業利益(為替変動を除く実質ベース)は15.2兆円(2013年度)から18兆円(2015年度)へと増加しています。このときの為替(ドル円)の値動きは、80円台(2013年1月)から120円台(2015年)という円安トレンドでした。為替変動による影響を除いた資料でこの数字ということは、「それだけ成長を続けている」と言えるのではないかと思います。

[質問]
今から私も長期投資を行なったとして、坂本さんのような収益(134万円→5000万円超、約37倍)を得るのは厳しいように思えますが、実際のところどうでしょうか?

[質問の背景・理由・補足]
直近10年で景気の大底ともいえる2009年1月から現在(2016年11月)では日経平均はおよそ11000円上昇、ドル円も35円ほどの開きがあります。そのため、やや意地悪な見方をすると「長期保有で2009年の134万円から2015年には5000万円と、約37倍も資産が増えたのは、こうした経済環境の波にうまく乗れたからでは?」といえるように思います。

こうした市況の違いと、前の質問にもある「小売株の成長もある程度景気や為替に左右されるのでは?」という疑問を踏まえると、今以上の日経平均および為替の伸びがないと厳しいのではないでしょうか。仮に、前述の約37倍にもおよぶ収益を得ようとするならば「現在の日経平均に11000円を足した約30000円(1990年頃の水準)、ドル円は約150円(1992年頃の水準)」になるくらい市況の変化がないと厳しいように感じられます。

日経平均の最大チャート(アメリカ版「Yahoo! FINANCE」よりキャプチャ)
日経平均の最大チャート(アメリカ版「Yahoo! FINANCE」よりキャプチャ)

[回答]
次の5年でさらに37倍にするのはまず不可能
だと思います。5000万円のさらに37倍は18億5000万円ですが、そこまで拡大できないでしょうね。私もそうなっているイメージが湧きません……。

正直なところ、本書の4章・5章で掲載した事例は、その当時で割安かつ伸び盛りだった銘柄を掲載しています。もちろん、成長がまだまだ続く会社もありますが、PERがすでに割高といえる状態にまで達しているので、読者のみなさまに対しても今はお勧めできないし、私自身が設定している「買いの条件」にも当てはまりません。

※例えばアークランドサービスの場合、平成37年までの成長戦略というプランが親会社であるアークランドサカモトのIR情報に記載されていました (2015年12月に出ていた当時のIR資料) 。それによると売上高1000億円、営業利益100億円目標と書かれていました。2016年の売上高が209億円、営業利益が29億円だったため、ここから3倍以上になると予想できます。

そのため、 新たな「割安かつ成長力のあるお宝株」を袋とじにし、本書の特別付録として掲載しました 。袋とじにある銘柄は、今はまだ知名度も低く出来高も多くないため「本当にこの株を買って儲かるのか? 大丈夫なのか?」という不安もあると思われますが、この中から新しい大化け株がいくつも生まれるはずです。

[質問]
P.71に「利益2倍・株価4倍」の条件3として「知名度が低いこと」と書かれています。しかし、知名度が低いがゆえに「業績はあがっているが、出来高が追い付いてこない。その結果、株価もイマイチあがらない」といった銘柄を持ちすぎるのも機会損失となるように思います。

出来高はどの程度考慮すればいいのでしょうか。また、そうした出来高が追い付いてこない銘柄について「どの辺で見切る」のような基準は決めた方がいいのでしょうか。


[回答]
正直なところ、出来高はほとんど考慮しなくてOKです。
買った当初は出来高が少なくても、保有後の会社の成長と知名度の向上、各種好材料が出ることで出来高も自然と増えていくためです。「最初は最少単元で購入し、業績が好調なのを確認してから買い増す」という運用方針のため、最少単元で損切りをしたとしても影響はほとんどありません。

まずは最少単元で購入し、 業績が予想通りにいかず(増益ではなく減益になった。または赤字になったというケース)、株価や出来高が上がってこないという場合は、見切ってもよいでしょう

長期投資は「買って放置するだけ」とはいっても、疑問は解消しておきたい(Illustration by radiorio/fotolia)
長期投資は「買って放置するだけ」とはいっても、疑問は解消しておきたい(Illustration by radiorio/fotolia)

[質問]
本書P.94に書かれているアークランドサービスの買い向かいについて「パニック売りの最中で難しい状況だったが、震えながら買い注文を出した」とありますが、そこで買い向かう決断を支えたものはなんだったのでしょうか。


[回答]
リーマンショック時の失敗からです。

このとき、覚えているのはコマツの株価です。リーマンショックの真っ最中、同社の株価が700円台まで下がったときがありました。そのときのPERはたしか2~3倍台くらいだったでしょうか、企業価値と比較したら、明らかに激安のタイミングだったにも関わらず、私は「恐怖」という感情に優先されて買い向かうことができませんでした。その後、コマツの株価は数年で2,000円台まで回復しチャンスに乗れなかったことを後悔しましたし、次は絶対逃さないと決めました。

結局、 恐怖はその最中だけで、永遠に続くわけではない のです。半年から1年過ぎればチャンスへと変わっていくという過程をリアルタイムで学ぶことができました。当時は 「100年に一度の経済危機」とか言われていましたが、数年後には「100年に一度の買いチャンス」へと変わっていた のが印象的でした。

次の恐怖は2011年3月の東日本大震災です。3月14日、15日は日本中がパニックの真っ最中です。メルトダウン、津波、計画停電……。誰もが売っている状況。まだまだ下がるというムードの中、総額300~400万円くらい買い向かったため、さすがに指が震えました(先が見えない中での、過去最高の購入額でしたから)。

[質問]
「パニック売りの最中の買い」の質問にも関係する質問です。P.172の「買いのタイミングの解説」でさまざまなポイントが書かれていますが、そうした場面ではチャートやテクニカル指標をどのように使っているのでしょうか。

また、テクニカルとひと口にいってもトレンド系指標やオシレーター系指標などいろいろなものがありますが、主に使っている指標はなんでしょうか?


[回答]
テクニカル分析は今まで勉強したことがないため、使っている指標はありません。


[質問]
大きなイベント(たとえば今回の大統領選挙など)がある場合、これに備えてポジションを整理したりする必要はあるのでしょうか? また、ポジション整理をしなかった場合でうまくいった例、失敗した例を教えてください。


[回答]
イベントに備えたポジション整理はしたことはありません。米大統領選時の株価急落時でも株はすべて保有していました。売りよりも、株価が下がって割安になった株を買い増しする条件(株価)のみ考えていました。


[質問]
投資家として企業訪問などを行なっていますか? 行なっているなら、そのときに見るべきポイントを教えてください。


[回答]
小売店の場合、実際の店舗に行ったり、料理を食べたりするほうがメインですね。 現場というか、消費者視点を重視 しています。また、企業訪問はしていませんが、IRフェアや会社説明会には参加しています。そのときは、

  • 会社予想よりも業績の進捗状況は良いのか、悪いのか? また、その要因は何か?(IR担当者に質問する。正確には教えてくれないが、ニュアンスでは伝わる)
  • 社長は誠実か?
  • 業務内容はわかりやすいか?(企業の社員から聞いてもどんな会社かわかりにくい場合、その会社の株価は買わない)。

あたりに注目するようにしています。


[質問]
長期投資をする場合、短期と違って1日中チャートに張り付く必要もないので、ときにはやることがない日もあると思います。そういうときは何をしているのでしょうか。


[回答]
主に、下記のようなことを行っています。

  • 会社四季報を再度読んでみる。
  • 気になった会社の決算短信をチェック。このとき、直近の短信だけでなく過去にさかのぼって見るようにしています。
  • 投資関係の本を読んで、運用方針の再確認。
  • 投資のプランを練ったり、新しい投資ノウハウを考え、少額投資から実践したりしています。

ネットやメディアの株投資に関する情報・ノウハウは、ニュースとしての性質も少なからず含まれるため、どうしても短期投資に関するものが中心になり、長期投資に関するノウハウはさほど多くありません。

しかし、長期投資は「買ったらあとは放置」では成功しません。企業業績がこれからどうなるのかを予測し、どの銘柄を買うかを慎重に見極める必要がありません。これから投資を考えている方は本記事、そして本書を参考にしてみてください。(提供: 日本実業出版社 )



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