中華レストランの東天紅 <8181> の株価が1月17日、6.3%高と急騰した。同じく、フランス料理の精養軒 <9734> も3.4%高を見せた。外食業界に何か規制緩和でもあったのだろうかと沸き立った。実はこの急騰劇のきっかけになったのが、パンダの発情だったという。いったいなにが起こったのだろうか。
パンダの発情で東天紅21%高、精養軒11%高
東天紅の株は、1月17日の後場から買い気配となり、一時前日比21.5%高の192円まで上げた。引けは6.3%高の168円。出来高も前日の2万株から197万株と100倍近くに急増している。フランス料理老舗の精養軒 <9734> 、一時前日比11.1%高の787円まで買われ、引けは3.4%高の732円、出来高は前日の1600株から4万株に増えた。
NHKが昼のニュースやウェブサイトで「上野動物園のパンダに発情の兆候 繁殖に向け準備」と報道したことが、この2銘柄の急騰のきっかけとなった。上野動物園の11歳のオスのリーリーとメスのシンシンの2頭のうち、リーリーが先月から明け方に室内を歩き回るなどの発情の兆候がみられたという。
東天紅は、昭和61年に上野不忍池に開業した老舗の中華レストランとして本店は東京都台東区池之端に構えている。上野不忍池の目の前だ。不忍池は上野公園にあり、西郷隆盛や国立西洋美術館、上野動物園があるスポットとして有名だ。上野精養軒も本社を台東区上野公園に構えており、まさに上野公園のど真ん中。
「パンダ発情」→「パンダ誕生」→「上野に人が押し寄せる」→「東天紅や精養軒に特需」という連想が働いたのだ。
実際に、過去にパンダブームで上野に人が溢れたことは何度もある。たとえば始めて日本にやってきた1972年のカンカンとランラン。一般公開初日には5万6000人が上野動物園に詰めかけ、3時間待ち。見られたのは1万8000人だけで、それも30秒だけだった。
日本で始めて生まれたパンダの赤ちゃんは1985年のチュチュ(初初)だったが45時間の短い命だった。日本生まれで始めて無事に育ち一般公開まで至ったのは1986年のトントン。名前は公募で決められ、応募数は27万通もあった。一般公開から1か月で、来園者は前年同期間比約2倍の42万人に達し、上野のトントンを見に行くことがブームになった。トントン人気で来園者も増加したため、上野動物園はそれまでのパンダ舎を拡張、1988年4月に新パンダ舎をオープンしている。昔ほどではないかもしれないが、パンダ誕生は確実に上野に人の流れを増やすのだ。
実は、東天紅と精養軒がパンダの思惑で買われたのは今回が初めてではない。2012年7月には赤ちゃんパンダの誕生のニュースで、両銘柄ともストップ高を演じた。残念ながらその赤ちゃんはすぐに死んでしまった。赤ちゃん誕生後年初来高値を付けていた両銘柄は急死が発表されると10%以上の急落となった。16年2月にも、リーリーとシンシンの発情の兆候との発表で両銘柄は大幅高した。上野に強いというだけで過去には、丸井 <8252> もパンダ関連として物色されたこともあるくらいだ。