中アント・ファイナンシャル・サービシズ・グループ(蟻金融服務集団)は1月26日、米国際送金会社、マネーグラム・インターナショナルの買収交渉で合意に至ったと発表した。

買収価格は8億8000万ドル(約1010億9440万円)。アントにとっては第2弾となる米買収案件である。銀行・モバイル口座24億件というマネーグラムの巨大ネットワークと6億3000万人のアント顧客を結びつけることで、一気に国際事業の拡大を図る意図だ。

前向きなホームズCEO「移民制限は憶測に終わるだろう」

アントが自社ウェブサイト上で発表した資料では、買収完了を第2四半期を予定。アレックス・ホームズCEOおよび既存のマネージメントチームはアント側のチームと事業統一に向け働きかけていく一方で、買収完了後もブランド名を変更することなく役割を継続していく。

1940年ミネソタ州に「トラベル・エクスプレス」として設立されたマネーグラムは(2010年ダラスに移転)、いわば国際送金サービスのパイオニアだ。一方アリババ(阿里巴巴集団)の金融部門として知られるアントは、「Alipay」で中国決済市場を独占。さらにはインドの大手モバイル決済サービス「Paytm」とも提携し、アジア太平洋地域は勿論、国際市場における競争力強化を目指している。昨年は米生体認証ソフト会社、アイベリファイも買収した。

エリック・ジンCEOは今回の買収により、海外送金へのアクセスや安全性向上などが期待できるとコメント。特に中国、米国、インドなどの主要経済国を中心に、低コストで安心して送金サービスが利用できる環境創りに励む構えを見せている。

買収を報じたブルームバーグなどは、トランプ政策の軸となる移民制限による影響を懸念している。マネーグラムの取引の1割は、トランプ大統領が標的にしているメキシコからの移民によるものだ。今後米国に滞在するメキシコ人の数が制限された場合、マネーグラムを始めとする国際送金サービスの利用料が著しく低下すると予測される。

しかしホームズCEOはそうした懸念が単なる憶測に終わると前向きにとらえており、国際送金市場のさらなる発展に希望をいだいている。

買収合意をうけ、同日のマネーグラム株の終値は8.8%高の12.92ドル(約1487円)を記録。昨年10月以来の大幅上昇となった。( FinTech online編集部

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