FinTechスタートアップ、特に融資関連への規制強化の声が欧州を中心に高まっている。オンラインのみで事業展開しているこれらの企業はテクノロジーを屈指した銀行顔負けの金融サービスを提供しているが、現時点では銀行規制の管轄外で活動が容認されている。
イングランド銀行のマーク・カーニー総裁はスタートアップのリスク対応能力などを懸念し、「FinTech企業は次の金融危機の引き金になる危険性を秘めている」とコメントしている。
「金融危機前の証券化ローンを彷彿させる」P2Pの勢い
カーニー総裁は1月16日、FinTechアクセラレータ・プロジェクトを発表するなどFinTech促進に熱心な姿勢を見せる反面、規制強化なくして発展はあり得ないという意向を明確にした。
FinTechスタートアップの規制に関する議論は度々持ちあがっているものの、銀行規制に匹敵するほどの確固たる規制は確立されていない。英ガーディアン紙の報道によると、英国で昨年新設された小中規模の融資会社の14%がP2Pスタートアップだ。
カーニー総裁は従来型の銀行を追いあげ始めたFinTech企業の勢いが、2008年の金融危機以前に銀行が乱用した証券化ローンを彷彿させるとコメントした後、これらのスタートアップには金融危機を乗り越えた実績がない点を指摘した。それと同時にオンライン最大の脅威、サイバー攻撃によるリスクへの懸念も示している。
また昨年2月、英国金融監督機関のアデイア・ターナー前会長は、P2Pスタートアップを「英国最低の偽天才銀行員集団になるだろう」と痛烈に批判。通常の融資規制では借り手の返済能力審査が必要となるところ、規制の枠組みからはずれていることを利用し、審査をおこたってリスクをあげている点をとがめている。
欧州中央銀行イェンス・ヴァイトマン総裁は、スタートアップによる事業活動データを把握しておく必要性を主張。FinTech企業やブロックチェーン技術を含む最新のテクノロジーが、金融安定に与える影響やリスクを検証するうえでの必須事項と米ロイターは報じている。
FinTechをめぐる金融規制は着実に動きだしているものの、スタートアップの事業範囲が活発化するにつれ、利便性と同等にリスクを考慮にいれた規制枠が必須となるのは当然だ。今後規制強化への動きがますます高まるものと予測される。( FinTech online編集部 )
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