仏コンサルタント企業、キャップジェミニの最新レポートから、消費者は銀行のセキュリティー対策に信頼を置いているが、銀行は自社のセキュリティー対策への自信に欠落しているという温度差が明らかになった。

安全性に不安を感じている消費者はごく一部であるのに対し、米セキュリティー会社からは米大手銀行の過半数のシステムがマルウェアに感染していたことなどが報告されている。

セキュリティー戦略を怠っている銀行は7割

この調査は8カ国(米・英・仏・蘭・独・西・典・印)の消費者7600人、6カ国( 米・英・仏・独・西・印)のデータ保護・セキュリティーの専門家180人を対象に実施された。専門家はいずれも国際収益5億ドル(約563億5000万円)以上の大手銀行および保険会社に勤務する、プロ中のプロだ。

銀行のセキュリティー対策を信頼している消費者は83%と、eコマース会社(28%)やリテール(13%)分野よりもはるかに多い。「自分の利用する銀行から情報が漏洩があったと思う」と答えたのはわずか3%だ。

対照的に自社のセキュリティー対応能力に自信があるエクゼクティブは21%。これらの企業の71%が「効率的なセキュリティー戦略も情報保護対策もとっていない」という。

こうした調査結果を裏づけるかのように、米セキュリティ・スコアカードによる昨年のサーベイでも、米国の最大手銀行20社中75%のシステムから、「Pony Loader」を含むマルウェアが検出されているにも関わらず、20%がセキュリティーレベルの低いメールサービス・プロバイダーを利用していることなども確認されている。

つまり「銀行・保険」という名がもつブランド力に反応し、無条件で信頼してしまう消費者が多いということになる。しかし銀行の失脚に最も厳しいのも消費者のようだ。65%の消費者が「銀行選びの際の重要な決め手」としてデータ保護・セキュリティーを挙げており、74%が「情報漏洩があれば銀行を変える」と回答している。

来年5月、欧州連合(EU)で導入が予定されている一般データ保護規則(GDPR)では、企業に対して新たな説明責任が課され、情報漏洩などが生じた場合は72時間以内に詳細を一般公開することが義務づけられる。キャップジェミニが指摘しているように、「現時点では銀行を手放しに信頼している消費者が仰天する」事態にならないように、より多くの銀行がセキュリティー強化に本腰をいれることを祈るばかりだ。( FinTech online編集部

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