結果の概要:雇用者増加数は16年9月以来の20万人超に加速

2月3日、米国労働省(BLS)は1月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で22.7万人の増加(1)(前月改定値:+15.7万人)となり、前月から伸びが大幅に加速、市場予想の+18.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も上回った。雇用増加数が20万人超となるのは、16年9月(+24.9万人)以来(後掲図表2参照)。

失業率は4.8%(前月:4.7%、市場予想:4.7%)とこちらは前月、市場予想を上回った(後掲図表6参照)。一方、労働参加率(2)は62.9%(前月:62.7%)と、こちらは前月から2ヵ月連続で改善した(後掲図表5参照)。

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(1)季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
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2)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比
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結果の評価:賃金上昇率は予想外に低下も、労働需給の改善は持続と判断

1月の非農業部門雇用者数は、10-12月期の月間平均増加数14.8万人増や16年平均の同18.7万人増から大幅に加速しており、17年は年初から良いスタートを切ったと言える。もっとも、労働市場が完全雇用に近づく中で、雇用増加数が今後も20万人超を維持するのは難しく、10万人台半ばから後半での推移となろう。

家計調査は、失業率が2ヵ月連続で上昇したものの、労働参加率が改善しており、先月のレポートでも指摘した通り、労働需給の悪化を必ずしも意味しない。

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一方、1月の雇用統計で注意すべき点は、賃金上昇の鈍化だ。時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比+0.1%(前月:+0.2%、市場予想:+0.3%)と前月から伸びが鈍化した。さらに、前年同月比でも+2.5%(前月:+2.8%、市場予想:+2.7%)と、前月、市場予想を下回り、16年8月以来の低い伸びとなった(図表1)。

このようにみると、1月の雇用統計は、賃金上昇率は期待外れの結果に終わったものの、雇用増加ペースの加速や、労働参加率の改善など、労働需給の改善は持続していると判断できる。

トランプ大統領は経済政策の目標として製造業の国内回帰を含めた大幅な雇用増加を掲げている。労働市場が完全雇用に近づく中で、雇用増加が賃金上昇に波及し易くなっていることから、トランプ氏が目指す雇用増加が実現する場合には、賃金上昇率は再び加速しよう。

事業所調査の詳細:広範な業種で雇用が増加

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事業所調査のうち、非農業部門雇用増の内訳は、民間サービス部門が前月比+19.2万人(前月:+15.0万人)となった(図表2)。

サービス部門の中では、医療サービスが前月比+1.8万人(前月:+4.0万人)と前月から伸びが鈍化したものの、人材派遣業が+1.5万人(前月:▲1.3万人)と増加したことから、専門・ビジネスサービスは+3.9万人(前月:+3.2万人)と伸び加速した。さらに、小売業も+4.6万人(前月:+3.4万人)と前月から伸びが加速した。

財生産部門は、前月比+4.5万人(前月:+1.5万人)と前月から伸びが加速した。製造業が+0.5万人(前月:+1.1万人)と2ヵ月連続で増加したほか、建設業が+3.6万人(前月:+0.2万人)と、前月から伸びが加速した。

政府部門は、前月比▲1.0万人(前月:▲0.8万人)とこちらは4ヵ月連続のマイナスとなった。内訳をみると、連邦政府が+0.4万人(前月:+0.5万人)と前月から伸びが鈍化したほか、州・地方政府が▲1.4万人(前月:▲1.3万人)と前月からマイナス幅が拡大した。

前月(12月)と前々月(11月)の雇用増(改定値)は、前月が+15.7万人(改定前:+15.6万人)と+0.1万人上方修正された一方、前々月が+16.4万人(改定前:+20.4万人)とこちらは▲4.0万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲3.9万人の下方修正となった(図表3)。また、今月は昨年の年次改定値も発表され、昨年の雇用増加数が月平均で+0.7万人上方修正された(図表3)。

なお、BLSの公表に先立って2月1日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が前月比+24.6万人(前月改定値:+15.1万人、市場予想:+16.8万人)と、前月、市場予想を大幅に上回っており、1月の雇用統計と整合的な結果となった。

1月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が26.00ドル(前月:25.97ドル)となり、前月から+3セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.4時間)とこちらは前月から横這いとなった。その結果、週当たり賃金は894.40ドル(前月:893.37ドル)と前月から増加した(図表4)。

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家計調査の詳細:労働参加率が2ヵ月連続で改善

家計調査のうち、1月の労働力人口は前月対比で+58.4万人(前月:+18.4万人)と、2ヵ月増加で増加したほか、伸びが加速した(3)。内訳を見ると、就業者数は+45.7万人(前月:+6.3万人)と前月から大幅に伸びが加速したほか、失業者数が+12.7万人(前月: +12.0万人)とこちらも前月から小幅ながら加速した。一方、非労働力人口は▲41.3万人(前月:+1.8万人)と、4ヵ月ぶりに減少した。この結果、労働参加率は62.9%(前月:62.7%)と2ヵ月連続で改善した(図表5)。

失業率は、4.8%と2ヵ月連続で上昇した。先月の当レポートでも指摘した通り、労働需給のタイト化を反映して労働参加率が改善する局面では、失業率の一時的な上昇が見込まれていた。1月はそのような状況を反映したものであり、失業率の悪化を懸念する必要はない(図表6)。

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次に、1月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は、185.0万人(前月:183.1万人)となり、前月対比では+1.9万人(前月:▲2.5万人)と3ヵ月ぶりに増加に転じた。この結果、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは24.4%(前月:24.2%)と前月から上昇した。一方、平均失業期間は25.1週(前月:26.0週)とこちらも前月から悪化した(図表7)。

最後に、周辺労働力人口(175.2万人)(4)や、経済的理由によるパートタイマー(584.0万人)も考慮した広義の失業率(U-6)(5)をみると、1月は9.4%(前月:9.2%)と前月から+0.2%ポイント上昇した(図表8)。U-6が上昇するのは16年7月以来6ヵ月ぶりである。通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は4.6%ポイント(前月:4.5%ポイント)と、前月から+0.1%ポイント拡大した。このため、1月はU-6の改善に足踏みがみられる。

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3)2017年から人口推計を変更しているため、2016年と断層が生じている。ここで記載している労働力人口、就業者数、失業者数、非労働力人口はこの断層を調整した後のもの。
(4)周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
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5)U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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