多額の相続税がかかるのを避け、あらかじめ財産を分け与えておくのが生前贈与です。1年間に110万円までの基礎控除があることを利用して、それ以下の金額を贈る「暦年贈与」の方法はよく知られていますが、父母や祖父母から子・孫へ、いわゆる「直系尊属」にあたる間柄での生前贈与であれば、「相続時精算課税制度」を利用することもできます。
特定の条件であれば、節税効果も高いのがこの制度です。その仕組みをチェックしてみましょう。
近年整備された「画期的」な制度
この「相続時精算課税」の制度ができたのは2003年度(平成15年度税制改正)のことで、それほど古い制度ではありません。この制度の創設について、日本公認会計士協会発行の「租税調査会研究報告第13号 相続・贈与に係る税制について」(2004年12月6日)では、「画期的な税制改正」であると評しています。
資料では、この制度が単純に、親の財産を生前に子に贈与することを容易にするというだけでなく、「今までの我が国の相続・贈与税制の中での贈与税が、税負担が重い『抑制的』な税であったのに対して、贈与税が相続税の前払いとして扱われるという『一体化の措置』がなされた」という点を、高く評価しています。
「相続時精算課税」は、当初は財産を贈る側(贈与者)が「贈与をした年の1月1日において65歳以上」で、贈られる側(受贈者)は「贈与を受けた年の1月1日において20歳以上」、「贈与を受けた時において贈与者の推定相続人」という条件でした。
その後の改正により条件がゆるめられ、2015年1月1日以降は、贈与者は「贈与をした年の1月1日において60歳以上」、受贈者は「贈与を受けた年の1月1日において20歳以上」(この前半は変わらず)、「贈与を受けた時において贈与者の推定相続人および孫」となっています。
「相続時精算課税」は何が有利?
さて、そもそもこの「相続時精算課税」のメリットはどこにあるのでしょうか。
それは、子どもや孫に対して、特別控除額2,500万円までという、ある程度まとまった金額を贈与税無しに生前贈与できるという点です(2,500万円を超える分については、一律20%の贈与税がかかります)。
贈与者が亡くなった際には、その時点の相続財産に加え、相続時精算課税を適用した贈与財産の金額(贈与時の時価)をプラスし、その総額をもとに相続税額が決められます。この時、実際に支払わなければいけない相続税は、すでに支払った贈与税分が控除された金額になります。
これが、先に述べた「贈与税が相続税の前払いとして扱われるという『一体化の措置』」の意味です。
これまで、生前贈与で節税を図るには暦年贈与しかありませんでしたが、これならば、2,500万円を上限に、「連年贈与」と判断されて課税される恐れもなく生前贈与を行うことができます。
こうした仕組みをよく学んで、上手な相続のプランを考えてみてはいかがでしょうか。(提供: IFAオンライン )
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