総合化学業界に構造変化の動き
アメリカで起こっているシェールガス革命は様々なところにその影響を及ぼしています。それまで資源輸入国であったアメリカが資源輸出国に変貌を遂げ、大国ロシアはアメリカが天然ガスを手にしたことにより、今までの資源輸出政策を見直さざるを得なくなりました。日本では、天然ガスの輸入先として友好国であるアメリカが急浮上してきたことにより、資源の安定調達に厚みが増したと言えます。日本の大手商社はアメリカのシェールガスの権益を得ようとする動きを見せ、プラント各社も熱い視線を送っています。
このような中で、構造変化を求められている業界があります。それが石油化学業界、総合化学業界です。石油を原材料として精製品を作ってきた企業は石油の枯渇、中国や中東における大型プラントの建設ラッシュという問題に加え、シェールガスという根本から覆されるような代替資源の問題が登場しました。石油で成長してきた石油化学業界や総合化学業界は大きな転換点に差し掛かっていると言えるでしょう。
ヘルスケア事業に注目が集まる
石油よりも割安に仕入れることができる天然ガスが主流となれば、天然ガスに対応した設備を建設する必要があります。シェールガスの登場前から、日本のエチレンプラントは過剰設備だと言われてきました。三菱ケミカルホールディングスが先陣を切って設備の閉鎖を行ってきましたが、シェールガスの登場により、過剰設備を抑制するだけでは、今後の収益アップを期待できない状況となっています。そこで、各社が目を付けた先がヘルスケア事業というわけです。
近年、総合化学企業によるヘルスケア分野を扱う企業の買収が活発化しています。2012年4月に旭化成がアメリカの医療機器メーカー、ゾールメディカルを買収しました。三菱ケミカルホールディングスは2013年に医薬用カプセル世界第2位のクオリカプスを買収し、三井化学はスイスのアコモン、韓国のKOCソリューション、ドイツのヘレウスホールディングスの歯科材事業、アメリカのデンカを立て続けに買収しています。このような動きの中で、各社の動きをもう少し掘り下げてみていきましょう。
旭化成のヘルスケア部門
旭化成というと戸建て住宅の「へーベルハウス」や集合住宅の「へーベルメゾン」というイメージが強いのではないでしょうか。しかし、旭化成の主業はケミカル事業です。そこから派生して住宅、医薬・医療、エレクトロニクス、繊維と事業の幅を広げてきました。その旭化成が次の柱にしようとしているのが、ヘルスケア事業です。現在、ヘルスケア分野を「医薬事業」「医療事業」「クリティカルケア事業」と大きく3つに分けて、それぞれ、旭化成ファーマ、旭化成メディカル、ゾールメディカルが主体となって事業展開しています。2016年度には新たな中期経営計画が発表される予定ですが、その中で、ヘルスケア事業がどのように取り扱われるか注目したいところです。