生命保険,選び方,見直し方
(写真=PIXTA)

テレビCMや新聞広告で「病気でも入れる」「保険料があがらない」など、さまざまな生命保険が紹介され、雑誌でもランキング形式で「良い保険」の特集記事が掲載されている。どれも魅力的に思えるが、誰にとっても「良い保険」は存在しない。では、生命保険はどのような視点で選べばよいのだろうか。

【「生命保険の選び方」シリーズはこちら】
(1)4月から保険料の値上げ「するべきこと、してはいけないこと」
(2)生命保険の見直し方 いつまで高い保険料を払い続けますか?
(3)その生命保険、絶対必要? ずっと同じ保険料を支払うのは損

1. 「どんな」保障を「いつまで」「どれだけ」欲しいか検討する

保険はいくつかの設計書をだしてもらって、保険料の予算との折り合いだけで選んでいる人も未だに多い。しかし、死亡や医療保障などがセットになっているタイプだと、よく考えると必要ではない保障が入っていることもある。

代表的なものに災害特約がある。地震や火災などの災害、不慮の事故などによるケガで死亡した場合、他の死亡保障に上乗せして保険金が支払われるものだ。ケガで亡くなったことで残された家族がより困るような環境があるのならば特約をつける意味もあろうが、死亡原因が何であれ遺族の必要保障額は変わらない。

「月400円ほどでお守りになる」と言われ、なんとなくつけているケースが多い。月400円でも10年かければ4万8000円だ。どんな保障をいつまで、どれだけ欲しいかしっかり見極めていくことが重要だ。

2. 準備済みの「保険」を把握する

毎月の給与から引かれている社会保険で、すでに大きな保障が準備できている。会社員の加入している健康保険の場合、ケガや病気で仕事ができない場合、3日以上継続して休むと4日目から1年6カ月、直近1年間の平均報酬月額の3分の2が給付される「傷病手当金」の制度がある。

つまり「病気で働けなくなったときの保険」と言える。この期間より長期の保障が必要だと考える場合、生命保険による保障の準備が欠かせない。

ただし、国民健康保険にはこの制度はないので自営業者は注意が必要だ。さらに障害認定を受けると国民年金、厚生年金ともに障害年金の制度もある。厚生年金は障害等級3級でも給付があるが国民年金は障害等級1級、2級のみと保障に違いがあるので気をつけてほしい。

死亡保障としては「遺族年金」がある。平均報酬月額30万円で配偶者と18歳未満の子どもが2人いる場合、厚生年金では月額13万円が支払われる。子どもが18歳になると給付額は減り、2人とも18歳になると約3万円になる。

教育資金が一番必要な時期に保障が減ってしまうので、保険を考える上でいつまで、いくらもらえる見込みなのかしっかり把握しておくことが重要だ。国民年金の場合、同ケースの遺族年金は約10万円だが、子ども2人が18歳になると給付額はゼロとなるので保障額を十分検討したい。

どれもこれも生命保険でカバーしようと思うと、保険料が膨らんでいく。

3. 価格だけではなく細かな給付要件もチェックする

電化製品のようにスペックが一律のものならば、価格比較サイトで一番安いものを買うことは良い方法だろう。しかし、そうはいかないのが保険だ。特に注意が必要なものが「がん保険」だ。「通院特約 5000円」と保険証券に記載されていても「20日以上の継続入院のあとの通院で保障」「入院・手術の後の通院でかつ退院後180日以内の通院のみ対象」「入院・手術せずとも通院のみで日数無制限保障」など給付要件は驚くほど異なる。同じ保険会社でも、加入年度によって異なることもある。

また、がんの診断給付は「上皮内がん」が対象外のものや、保障額が「悪性新生物」の10分の1になっている保険もある。上皮内がんは治療費用がそんなにかからないからそれでOKと思えるのならばそのような保険が良いが、上皮内がんでも悪性新生物でも心理的に同額保障にしてほしいという思いがあれば同額保障の保険を選ぶべきだろう。

治療方法を抗がん剤・放射線等に限定した保険にすれば、保険料を安く抑えることもできる。がん治療の多くがこの2つということを考慮すれば、この選択もよい。がん診断給付金100万円など一時金が給付されるタイプならば、自由診療のワクチン療法を受けたり(健康保険対象外で10割負担)、末期なら治療せず家族とゆっくり旅行したりするなど、自由にお金を使うこともできる。

「自分の万一」をイメージした保険選びを

家族構成、収入、住宅所有の有無(所有して住宅ローンがある場合、借主に万一のことがあれば借金はなくなるため、保障を低めに考えることも可能)、資産残高(資産があればそもそも保険は不要になることもある)、将来の夢など、同じ環境の人はいない。自分に万一のことがあった時や、自分が実際に病気になった時どのような保障が欲しいかによって保険選択は全く異なり、どの保険が良い保険かは一人一人異なるのだ。具体的に「自分の万一」をイメージして、自分に一番「良い保険」を選んでいきたいものだ。

稲村優貴子
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、心理カウンセラー
大手損害保険会社に事務職で入社後、お客様に直接会って人生にかかわるお金のサポートをする仕事がしたいとの想いから2002年にFP資格を取得し、独立。現在FP For You代表として相談・講演・執筆業務を行い、テレビ・新聞・雑誌などのメディアでも活躍中。 FP Cafe 登録パートナー。