生命保険料,値上げ
(写真=PIXTA)

2017年4月から、生命保険料の値上げが順次行われることが現実味を帯びてきている。値上げ前には駆け込み需要が増えるものだが、保険料がどのように決まるかご存知だろうか。

保険料が何に基づいて決められているかを知れば、保険料の仕組みがわかる。仕組みがわかれば保険会社の説明も理解ができ、また疑問点も出るだろう。今回はその仕組みを説明した上で、値上げまでにすること、してはいけないことをお話しする。

【「生命保険の選び方」シリーズはこちら】
(2)生命保険の見直し方 いつまで高い保険料を払い続けますか?
(3)その生命保険、絶対必要? ずっと同じ保険料を支払うのは損
(4)生命保険の選び方 自分に一番「良い保険」の条件

保険料が決まる3要素「予定死亡率」「予定利率」「予定事業費率」

生命保険の保険料は、次の3つの要素で決まる。どの保険会社もこの考え方は変わらない。

(1)予定死亡率
保険会社共通の「生保標準生命表」から、年齢・性別ごとに死亡者数の割合が算出されている。その割合を「予定死亡率」という。

定期保険や終身保険といった死亡保険においては、予定死亡率が低いほど保険料は安くなり、予定死亡率が高いほど保険料は高くなる。一方、個人年金保険やこども(学資)保険といった生存保険では、予定死亡率が低いほど保険料は高くなり、予定死亡率が高いほど保険料が安くなる。

(2)予定利率
保険料は、将来の保険金を支払うために積み立てて運用されている。その運用収益の見込みを「予定利率」という。予定利率が高いほど保険料が安くなり、予定利率が低いほど保険料は高くなる。

(3)予定事業費率
保険会社が、業務を遂行するためにかかる費用の割合を「予定事業費率」という。この率は企業努力によるものが大きいといえる。予定事業費率が高いほど保険料が高くなり、予定事業費率が低いほど保険料は安くなる。

4月から生命保険料が上がりする理由とは?

保険料の仕組みが分かった上で、なぜ4月から保険料が値上がりするのかを説明していこう。

結論からいうと、上述(2)の「予定利率」が以前より下がったためだ。つまり、これまでの予定利率のままで保険料を計算すると、積立金の残高が目減りして、将来保険金を支払うために法律で決められている積立残高(責任準備金)を維持できなくなるのだ。

その背景としては、2016年に行われた日本銀行のマイナス金利政策がある。この影響を受け、生命保険料の主要な運用先である「日本国債」の利回りが下がり、そのために予定した運用益の確保が難しくなった。これにより予定利率を下げざるを得なくなり、保険料が値上がりすることになるのだ。

日本国債の利回りが下がったのならば、米国債などの債券に投資すれば良いと思う読者もいるかもしれないが、問題は保険商品の保険金・給付金は日本円で支払うケースが大半ということだ。保険会社の運用は長期なので20年、30年後の為替見通しを立てるのは難しく、為替リスクが取りにくい。このため、多くの日本の保険会社は日本国債への投資比重が大きく、米国債などの外債への投資は少ないのが現状だ。

保険に加入している人は「予定利率」の確認を

各保険会社で保険料値上げのタイミングは異なると考えられるが、いずれにしても値上げまでに、すでに契約をしている人への新契約のアプローチは、確実に増えることとなる。

「予定利率が下がる=保険料が上がる」というのは前述した。つまり、保障額を上げる、または以前より有利な特約を得るなら、保険料が上がる前のこのタイミングで契約したほうがいいのだ。保障を上げたり、特約を追加変更したりするなら、保険料が上がる前に契約しておけば、その後に保険料が上がっても契約時の保険料が続くことになる。

しかし、一番に確認すべきはことは、現在加入している保険の内容、特に予定利率を確認して確認することをお勧めする。今加入している契約のほうが、予定利率が高いに違いない。

値上げまでにすること、してはいけないこと

予定利率が下がるということは、保険料が上がることとイコールだ。また、今の契約のほうが予定利率は高いにも関わらず、案内された新しい保険契約のほうが補償額は同じで特約の内容は良くなっている。それなのに、保険料が変わらないのはなぜだろうか。

これは、積立型の保険契約でよくあることだが、積立型の契約は掛け捨て部分と積立部分の合算が支払保険料となる。途中解約した時に支払われる保険金のための原資は、積立部分の保険料からとなる。

その貯めてきた保険料全額を、新しく契約する前払い保険料として使ってしまうため、将来支払う保険料が安くなるのだ。この契約形態を「転換契約」という。予定利率の良かった契約をやめて、あえて予定利率の下がった契約を結ぶことになる。

もちろん、その説明を受けて、補償内容が良くなった保険に、今までの保険料で加入できたと納得をした上での契約ならいい。しかしそれなら、今の契約をそのまま払い済みなどにして、足りない補償だけを値上がり前の保険料で新契約した場合の保険料も見積もり、比較した上で決めるべきだ。まして現在の契約が、個人年金保険やこども(学資)保険などの積立型の保険なら、それがより顕著なので、かならず予定利率を比較することが重要となる。

保険は決して安い買い物ではない。月々2万円を40~60歳の20年間支払えば、総額480万円にもなる。もうすぐ保険料が上がるからと、今の契約の予定利率を確認もせずに焦って解約(転換)することだけは、絶対にしてはいけない。

小野みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社勤務を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆、家計・年金・労務相談などを中心に活躍中。 FP Cafe 登録パートナー