「これまでそれなりに株式投資を行なってきたけど、いまいち成果がでていない。これはと思える株に狙いを定めたので、本格的に投資に取り組みたい」
そのような人に、次のステップとして取り入れてほしいのが「効率の良い投資」を目指すことです。ここでは投資のプロであるファンドマネジャーが株を買うときに大切にしている3つの視点をみてみましょう。(※本記事は、土屋敦子氏の著書『本当にわかる株式相場』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています)
1. 投資の時間軸を考える
投資の際には、回収できる時間軸も考えるべきです。投資期間が長くなれば長くなるほど、リスク(不確実性)は増大します。その際に企業価値に達する時間軸がどのくらいかも考えるべきです。
「A社の企業価値は現在の倍だが、倍になるのが5年後で、B社の企業価値は現在の40%上に過ぎないものの、いまから1年未満に達成できる」と考えられるのであれば、より短い時間軸で投資効果を回収できる(リスクを抑えられる)という観点から、B社のほうが投資妙味があります。
また、複数の銘柄に投資をする際は、たとえば、すべてが10年後に成果を回収できるものよりも、さまざまな時間軸で回収できそうなものに分散投資をするといいでしょう。そうすることで投資資金は安定的に利益を出すことができ、投資成果を回収したものについては新たなものに再投資することにより、複利の効果を得られます。
また、複数の銘柄に分散投資するということは、リスクを分散することであり、当然、リターンも分散されることとなります。つまり、複数の銘柄に分散投資をすれば1銘柄に投資するよりも損益はなだらかになる可能性が高いということです。
逆に集中投資をしたら、良い銘柄に投資をしていればそれだけ大きな利益を上げられますが、誤った投資をしてしまうと、大きな損失となります。
2. コンセンサスを理解する
企業業績のコンセンサスとは、たとえば新聞がすでに報道した企業業績の上振れ、下振れ見通しや『会社四季報』、『日経会社情報』、証券会社のアナリスト予想などです。
なぜコンセンサスを理解することが重要かというと、コンセンサスはすでにみなが知っている情報として株価に織り込まれていると判断できるからです。
たとえば、とても良い会社があって、「今期会社が20%の増益予想をしているけど、自分の予想では30%の増益になると思うから株を買おう」と判断したとします。しかし、その会社のコンセンサス予想が40%の増益であったとしたら、株価はすでにその増益率を織り込んでいるため、30%の増益であれば失望となり、株価が下落する可能性があります。
コンセンサスを理解することの大切さは、企業業績についてだけではなく、株式市場を取り巻く外部環境などについてもあてはまります。2016年の話でいえば、日本政府の補正予算の額が発表になったときに株式相場の失望売りにつながったケースがあります。実際の発表前に外国メディアなどが煽るように強気な報道をしていました。
真水で10兆円程度が市場の期待で相場は買い上がりましたが、実際には真水が5兆〜7兆円ほどだとわかると市場は期待ほどではないと日本株を売ったのです。
3. 株価のドライバーを把握せよ
ドライバーとは英語の「What drives you ?」という言い回しで使われている“drive”からきており、「あなたの原動力は何ですか?」「あなたを突き動かすものは何ですか?」と同じ意味で、株価を動かす原動力は何かを把握することが大切だということです。
このドライバーは、業種や銘柄によってさまざまです。そのため、投資する企業の株価ドライバーを個々に探していく必要があります。
たとえば、小売株や外食株であれば月次売上の前年同月比の伸び率、鉄鋼株であれば鉄鋼価格の推移、商社株であればコモディティ価格の推移、半導体株であれば世界の半導体の販売額に対する受注額の比率(BBレシオ:Book-to-Bill Ratio)だったりします。
結構、マニアックなドライバーも過去にありました。デジカメが普及し始めたころのことです。いまはなき三洋電機の利益がデジカメの普及とともに拡大していたときがあったのですが、株価は国内外のデジカメの生産、販売、輸出、在庫動向データを加工した指標にぴったりと連動する推移をしていました。また、コニカ(現コニカミノルタ)がデジカメ用のCCDレンズを生産していたのですが、この利益率は非常に高かったことから、株価はこの生産個数と連動していました。(提供: 日本実業出版社 )
土屋 敦子
アトム・キャピタル・マネジメント 代表取締役