転職マーケットは依然として活発化しており売り手市場が続いている。採用する側の企業にとっては、優秀な人材をどう確保していくかが課題となっているだろう。人材採用・入社後活躍サービスを提供するエン・ジャパンが、中途採用支援サイト「エン人事のミカタ」上で行ったアンケート調査「選考辞退について」では、「中途採用において選考辞退は起きたか」の質問に、83%の企業が「はい」と答えている。さらに、「以前に比べて選考辞退の数に変化はあるか」との問いには、47%の企業が「増えた」と回答している。有効回答数は456人。
売り手市場のなかでは、複数企業から内定をもらう求職者は増えることになる。そのため、選考辞退が増えるのも、ある意味当然のことだと言える。しかし、「選考辞退が増えた」と感じている47%の企業にとって、それは時代の流れでは済まされない問題だ。
「ドタキャン」での辞退多し
同調査では、応募者の「辞退した理由」についても質問している(複数回答可)。「他社で選考通過・内定取得」が79%で最も多く、次いで「理由は聞いていない」が25%、そして「希望する給与や待遇ではなかったため」が23%だった。応募者が他社に流れてしまった経験のある企業は約8割にのぼる。
また、「どのタイミングで応募者の辞退が起こったか」という問いでは、「選考中の辞退」が58%、次が「内定後の辞退」で56%、続いて「面接当日のドタキャン辞退」の55%だった(複数回答可)。意外にも「当日ドタキャン」が多い。
調査では、「当日ドタキャン」の内容についても重ねて質問している。「ドタキャン辞退をした応募者から連絡はあったか」の問いでは、「連絡なし」が43%、「メールで連絡あり」が30%、「電話で連絡あり」が27%となっている。企業側もドタキャンには困惑している様子で、「連絡がないまま面接に来ないのが一番困る」との声も多く聞かれる。
企業と求職者とのズレ
ここまでは企業側へのアンケートに基づいて選考辞退を見てきたが、ここで視点を変えて求職者側の意見を探ってみよう。
「エン人事のミカタ」では、選考辞退の真相に迫る「辞退の心理2017」調査を発表している。転職活動中の「エン転職」会員約1655人へのアンケートを集計したものだ。調査期間は2016年12月4日~7日。
調査では、選考辞退の経験者に向けてアンケートをとっている。辞退の時期を「面接前」「面接後」「内定後」の3つのタイミングに分類し、それぞれの時期に辞退をした理由をきいている。
「面接前」に辞退した理由(複数回答可)では、「再考し、希望と異なると判断」38%、「希望に反するスカウトメールがきた」38%、「ネットの評判や噂を見て」29%、が主な理由となっている。
「面接後」では、「面接で知った仕事内容が合わない」43%、「面接で知った給与や勤務地などの条件が合わない」43%、「面接の説明と求人情報に食い違いがある」29%という理由で選考辞退をした人が多かった(複数回答可)。
「内定後」に辞退した人では、「給与や勤務地の折り合いがつかない」40%、「社風が合わない」32%、「他社で選考通過・内定取得」30%という理由が多く見られた(複数回答可)。
企業の考える辞退理由と求職者の辞退理由には、ズレがあるように思える。企業側は、応募者の選考辞退は「他社で選考通過・内定取得」という理由が多いと考えている。しかし応募者の多くは、「仕事内容が合わない」「給与や勤務地の折り合いがつかない」など、他社が絡まない理由で辞退しているのだ。
有効な対策で魅力ある企業に
こういった食い違いやミスマッチを防ぐためには、有効な選考辞退対策が必要になる。冒頭で紹介した「選考辞退について」の調査では、選考辞退対策についてもアンケートをとっている。対象企業のうち何らかの選考辞退対策をしている企業は、全体の48%という結果だった。
選考辞退対策の具体的な内容は、「書類選考後の連絡を早くする」87%、「面接日程を複数設定する」73%、「応募後に今後の日程やお礼のメールを送る」52%というものだ(複数回答可)。しかし、辞退対策で有効だった取り組みについてきいてみると、「とくに効果なし」25%、「書類選考後の連絡を早くする」24%、「面接日程を複数設定する」11%となった。「とくに効果なし」という回答が多く出てくるということは、残念ながら対策は成功していないということになる。
売り手市場でも採用に成功している企業はたくさんある。有効な選考辞退対策を見つけることは、企業の魅力や強みにつながるだろう。まずは、求職者との意識のズレをなくすところから始めたい。(渡邊祐子、フリーライター)