株式投資をする人は、その会社の株が上がると思って株を買ったのだと思いますが、なぜ株価が上がると思うのか、再度よく考えてみてください。とくに理由がなく、「何となく上がりそう」というのは完全な博打です。たとえば、「○○の需要が高まることで業績が拡大すると思うから」であれば△の回答です。では、何をすれば○だといえるのでしょうか。(※本記事は、土屋敦子氏の著書『本当にわかる株式相場』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています)
あなたの「株価が上がる」理由は明確ですか?
株を買うときに、確認するべきポイントは3つあります。
1. いまの株価は安いのか?
安いと思ったら、何で安いといえるのか、きちんと考えます。当然、業績を確認せずに安いという判断はできません。
2. その会社の株価はいくらであるべきか
自分が考える企業価値を算出します。また、いま安価に放置されている株価が自分の考える企業価値になるためのカタリスト(きっかけ・トリガー)となるものは何なのかを明確化します。
3. 株価チャートから、株価の動きの癖を理解する
急に上がったとき、急に下がったときがあれば、そのときに何が起こったのかを確認しましょう。その会社の株価を動かす要因をできるだけ理解しましょう。
「効率が良い」投資が勝ちにつながる
上記のポイントを押さえて、実際に買ってもいいと思える株に狙いを定めたならば、次になすべきことは、効率の良い投資を心がけることです。
投資したいと思う会社が2つあるとします。A社の株価は現在1000円で、企業価値から逆算した株価は2000円、いまの株価の倍だとしましょう。B社の株価も現在1000円で、企業価値から逆算した株価は1400円、40%上だとしましょう。
どちらに投資すべきでしょうか?
目標株価だけで考えるとA社のほうが上昇率が高くて良いのではないかと考えると思います。しかし、このときに考えなければならないことは、A社が倍になる確率とB社が40%上昇する確率の比較です。A社が30%の確率で株価が倍になり、B社は90%の確率で株価が40%上昇すると考えた場合は、どうでしょう?
この場合、
A社:1000円増×30%=300円増
B社: 400円増×90%=360円増
が確率を加味した上昇幅となります。
つまり、A社のフェアバリューは現在株価1000円+300円=1300円、B社のフェアバリューは1000円+360円=1360円と考えます。企業価値だけで見るのではなく、確率も考え、どちらのほうが効率が良いかを考えましょう。このケースだとB社に投資するほうが効率が良いという考え方になります。
勝てる確率が低いときは勝負しないで現金を持つ
本書では株式相場と取り巻くさまざまな事象について解説しますが、「外部環境が良くないので、いまは利益が出せない」と思ったら、投資資金はしばらく現金化することも大切です。これこそ個人投資家の特権です。機関投資家は運用手数料を受け取っているため、投資資金をすべて現金化することはなかなかできません。
たとえば、2008年のリーマン・ショックの年には、TOPIXは40%を超える下落をしました。年初から下落し、3月にいったん底を打ちましたが、そこから秋にかけてさらに大きく下落しました。このような環境下でも機関投資家は決められた金融資産に投資をしなければなりません。
しかし、ボラティリティ(株価の変動率)も高く、リスクも上昇、株価の下落圧力が強いときには、企業価値との開き(業績見通しが変化しない前提として)が生じているとしても、勝てる確率は低くなっています。
勝てる確率の低い勝負は、あえてしないほうが賢明で、「CASH IS KING」です。つまり現金で持っていれば株式の価値の目減りは気にする必要はありませんので、ダウンサイドリスク(株価が下落して損失を被る可能性)はかなり抑えられます。
インフレや為替動向などにより現金の価値そのものがどうなるかは別問題としてありますが、日本人で日本に住んでいれば円を使うので、その価値が上がろうが下がろうがそれほど懸念する必要はないでしょう。(提供: 日本実業出版社 )
土屋 敦子
アトム・キャピタル・マネジメント 代表取締役