落ちてくるナイフは掴むな
(写真=Thinkstock/Getty Images)

米国の発電子会社「ウェスチングハウス」を中心とした東芝 <6502> の巨額損失問題が明らかになってから半年が経過した。東芝の株価は問題発覚前の2016年12月15日には475.2円だった。しかし、問題発覚を機に、東芝の株には売り注文が殺到。株価は急落した。

その後、東芝は2017年2月14日に2016年4~12月期の決算発表について、最大1カ月の延期を申請したと発表すると、更なる悪材料への思惑から、株価は2017年2月17日には2017年の年初来安値178.0円まで下落した。2017年6月6日現在、262.8円と落ち着きを取り戻し始めているようにも見える。

東芝の株を買うために2016年12月には45万円程度の投資資金が必要だったが、今では25万円前後で済む。株価水準を安いと判断した個人投資家は多く、出来高は2017年以降増大傾向にある。


NISA(少額投資非課税制度)とは

東芝の株の購入に、個人投資家の多くが利用しているのが「NISA(ニーサ)」だ。SBI証券が発表しているNISA口座での国内株式買付金額ランキングでは、2017年1月、2月は、東芝がランキング1位となっていた。

NISAとは2014年から始まった少額投資非課税制度のことだ。NISA専用の口座を開設することで株式や投資信託等を購入できる。

①毎年120万円を、②最長5年間まで、③投資総額最大600万円まで
投資することができる。投資枠で発生した利益に対して税金がかからない。非課税にすることができるのだ。

利益に対して税金がかからないと聞くと、お得に感じる人も多いかもしれない。しかし、NISA口座で購入した株や投資信託等は、特定口座や一般口座の株等と損益通算を行えないというデメリットがある。特定口座や一般口座であれば、株式投資等で損失が発生した場合には利益と損益通算できる。

落ちてくるナイフはつかむな

株価は通常、いったん下落し始めると、底を打つまで下落を続ける。株価チャートを見る限り、東芝の株は6月6日現在、底を打ったと判断するにはまだ早い。更に株価が下落する恐れもあるうえ、上場廃止の可能性も指摘されている。

相場格言に「落ちてくるナイフはつかむな」というものがある。落ちてくるナイフをつかむと、うまく柄をつかめずケガをする恐れがあることに例えたものだ。株価が急落している時に急いで株を買うとどんどん値下がりして大損する恐れがあるから、株価が底を打ってから株を買っても遅くはない、という意味だ。

東芝の株価は475円から一時は178円までおよそ300円も下落し、高値から半分以下の株価となった。2016年12月に比べれば安くはなったが、底を打ったとは断言できず、その後も上昇傾向にあるとは言い難い。東芝の株を安くなったと判断し、NISA口座で1月以降に購入した投資家の多くが損失を被り、株を売るに売れない、塩漬けの状態になっているはずだ。

特定口座や一般口座での取引ならば損益通算できるが、NISA口座では損益通算を行うことができない。株価の下落に耐えられず、株を売却したら損失が確定し、非課税という特典も受けられない。そのため、株価が下落している株を適当に買い、損失を被る事態だけは避けたい。

損失が発生した場合の対処法

NISA口座で購入した株が値下がりして、損失が発生した場合の対処法はあるのだろうか。

ある。NISAでは1年間に120万円投資することができる。まだ投資資金が残っているのであれば、購入金額を引き下げるために同じ株を購入する、いわゆるナンピンを行うことができる。ナンピンでは、株を安い株価で買い増すため平均単価を下げられるため、株価が上昇した場合に売りやすくなる。

例えば、250円で買った株が150円まで値下がりした場合、150円でナンピンを行えば、(250円+150円)÷2株=200円となり、1株の購入単価が200円になる。200円より株価が上昇すれば、売却できるようになる。

ただし、ナンピンは慎重に行わなければならない。底を打ったと思ってナンピンしたのに株価がさらに下落することはよくある。ナンピンのつもりが更なる損失の拡大につながる恐れもあるのだ。

株価が大幅に安くなるとお得に思え、「買っておかないと損」という気になるかもしれない。しかし、株価がいつ、いくらで下げ止まるのかは誰にもわからない。とりわけNISA口座を利用した場合には、損失が発生した場合の対処法は限られる。株価急落銘柄を購入した場合には損失を被るリスクがある点、そして、NISA口座の利用にはメリットとデメリットがある点は覚えておきたい。

横山利香(よこやまりか)
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。ファイナンシャル・プランナー。相続士。「会社四季報オンライン」や「All About株式戦略マル秘レポート」での連載や、ヤフーファイナンスの「株価予想」でもマーケットコメントを執筆する等、株式投資や不動産投資といった投資や資産運用をテーマに執筆、 メルマガ発行 、講演活動、株塾を行う。

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