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(写真=chanvitphat/Shutterstock.com)

株価が上がるきっかけとなるものがカタリスト(きっかけ・トリガー)です。私はこの「カタリストを見つける」ことが投資の勝率を上げることにつながると考えています。

たとえば、業績も良い、経営者も良い、企業価値から逆算した株価が、いまの株価より高い会社があるとします。しかし、株価が割安なのには、それなりの理由がある場合がほとんどですから、割安な株価が上昇に転じるためのカタリストがなければ、その会社の株を買っても儲かる可能性は高くないと思います。

(※本記事は、土屋敦子氏の著書『本当にわかる株式相場』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています)

株価が上がるきっかけを見つけられるか?

では何がカタリストになるかといえば、今後その企業の事業モデルが変わることによって大幅増益が見込める、経営陣が若返ることで従来の安定経営から新規事業に積極的になってより高成長が期待できる、といったものなどがあります。

あるいはシンプルに、上方修正や下方修正を発表する可能性が高い、といったものもカタリストといえます。また、「経営者の意識」もカタリストとして重要です。

上場企業のなかには、残念なことに企業の時価総額を上げることが重要と考えていない企業も存在します。これらの企業を投資対象としても成果の回収は見込みにくいため、投資対象からは外すほうが賢明です。上場している企業の経営者は、自らの時価総額が本来の企業価値で評価されているかどうかを常に意識するべきで、評価されていないと思うのであれば正当に評価されるための投資家対応をしていく必要があります。

私が投資対象を決めるときはこのような経営者の意識にも注目して投資する企業を選別していますが、実際に、経営者の意識ひとつで会社が大きく変わり、それが時価総額に反映されていく例も数多く見てきました。

投資は連想ゲーム?

投資をする際に、連想ゲームのように考えている人は多いと思います。

たとえば、自動車が海外でよく売れていると聞くと、まず自動車株に買いが入りますが、それに乗り遅れたら、関連している自動車部品も売れるはずと、自動車部品会社株が買われるという具合です。

とくに、デイトレーダーたちはこの連想ゲームがとても得意です。たとえば、任天堂のポケモンGOが米国でヒットし始めたと聞くと、まずは任天堂の株価が急上昇しましたが、それに乗れなかった人たちが、任天堂のサプライヤーを買い、またVR・AR技術を使ったゲーム株も買われました。

フィンテック(ITを駆使して新しい金融サービスを生み出したり、既存の金融サービスを見直したりする動き)がテーマとして騒がれたときも同じです。

フィンテック関連銘柄が次々に買われ、終盤には「その会社の何がフィンテックなの?」というような会社も、フィンテックという言葉を発しさえすれば買われました。

FinTechがテーマになると

昨今はいわゆる「テーマ」で短期間に株価が乱高下するようになりましたが、こうした連想の情報がSNSなどを通じて瞬時に大多数の人たちに広まるようになったこともひとつの理由だと思います。

個別銘柄ではなく、株式相場を取り巻く情勢について連想ゲームのような考え方ができた事例を挙げると、たとえば、2013年に、米国のQE3(Quantitative Easing 3 =量的金融緩和第三弾)が終了する可能性を当時のバーナンキFRB議長が伝えたことで、株式相場下落、新興国通貨下落、コモディティ価格下落、円高という動きになったことがあります。

米国がQEを開始したとき、中央銀行は銀行から金融資産を買い、マネーサプライを増加させるとともに利回りを低下(債券価格は上昇)させました。これにより、米ドルの価値は下がり、金融機関に投入された資金は投資に回されました。その投資資金の行先のひとつが金、石油などのコモディティ市場やそれを生産する新興国市場でした。

QEの終了で、それら資産への資金投入がストップし、「QE開始時と逆の動きが起こる」という連想が拡がり、リスクオフ(より安全な資産に資金が向かいやすい状況)が起こったのです。そして、実際2014年10月末にQEが終了してから、コモディティ価格は激しさを増して下落することとなりました。(提供: 日本実業出版社

土屋 敦子
アトム・キャピタル・マネジメント 代表取締役