2017年に入り二度も最高値を更新したビットコインだが、価格変動は健在といった感が否めない。

しかし豪、カナダといった国ではビットコイン促進が盛んになっているほか、世界4大会計事務所のひとつ、PwC(プライス・ウォーターハウス・クーパース)が、キャリアアドバイスの一環として「ビットコイン購入」を推奨するなど、ポジティブな流れは感じられる。

市場が不安定な市場がビットコイン価格を押しあげる?

2月24日、史上最高値を更新したビットコイン。貯蓄確保に奔走する投資家が中国やベネズエラで急増し、価格を1201.81ドル(約14万円/Coindiskデータ)まで一気に押しあげた。

前回最高値を更新したのは今年1月4日だ。しかし直後に急落。1月11日には776.98ドル(約8万7573円)まで落ちこみ、それを境に再び上昇を始めるという相変わらずのジェットコースター変動を継続。

ビットコインを早期から分析しているウェッドブッシュのアナリスト、ギル・ルリア氏を始め、多くの専門家が「世界的な法定通貨に対する不安感」や「規制強化」が、ビットコイン価格を吊りあげる主な要因と見なしている。

ベネズエラなどはわかりやすい一例だ。すでに原油安で弱化していた経済が、昨年12月の高額紙幣への移行延期でさらに悪化。インフレ率500%に達したといわれている。自国通貨より仮想通貨を安全視する国民が増えているのも無理はない。

中国では資本・通貨規制による締めつけがますます強くなり、投資家は自国通貨の対象外である仮想通貨に走らざるを得ない状況だ。

こうした前提で予想すると、市場が不安定であればあるほどビットコイン価格は上昇を続けるということになる。果たして本当にそうなのだろうか。

仮想通貨は予想のつかない「生き物」

「市場の変動」はビットコインの最大の強みでもあり弱点でもある。通常の為替相場同様、ビットコインは非常に些細な出来事に、忠実なまでに反応する。

Brexitやトランプ政権誕生といった不安定要因には値上がりを見せ、ビットコイン取引所がハッキングされたといった報道には値下がりする。1月の価格暴落の理由も、中国当局がビットコインの監視を強化するとの懸念が広がったことが引き金となった。

仮想通貨は歴史も浅く取引範囲も限定されているため、様々な意味で予想のつかない「生き物」である。知識や経験豊富なビットコイン専門家の間でも、その変動ぶりを予測するのは至難の業のようだ。それを証拠に、専門家による2017年の価格予想も800ドルから3万5000ドル(約9万184円394万5550円)からまで、てんでばらばらである。

そう考えると、「市場が不安定だから値上がりする」と一方的に解釈するのは危険だろう。

ムスカット首相「必要なのは圧力ではなく、効率的なメカニズム」

この予想のつかない変動が、ビットコインを主流通貨に押しあげる妨げとなっているとの指摘も多い。また国によって異なる規制基準が、普及環境に不透明さを与えている感は否めない。

豪、カナダなどではビットコイン促進が加速する一方、中国、タイ、韓国、シンガポール政府などはビットコインの規制強化を打ちだしている。欧州中央銀行(ECB)は昨年10月、欧州連合(EU)に仮想通貨の厳格な規制を要請。「中央銀行の資金供給に関する統制力に影響を及ぼす」前に、仮想通貨の拡大を食いとめることでリスクの芽を摘みとる戦略だ。

これに対し2月23日、ブリュッセルで開催された「欧州政策研究センター(CEPS)主催のイベントに参加したマルタのジョゼフ・ムスカット首相は、「仮想通貨の勢いは止められない」とコメント。

欧州における規制強化に向けた動きを批判すると同時に、「規制当局は圧力をかける代わりに、仮想通貨を効率よく、かつ安全に普及させるメカニズムの構成に力をいれるべきだ」との見解を示した。社会経済的圧力の増している欧州が仮想通貨のポジティブな利用に成功すれば、様々な革命の中心地となることも可能かも知れない。同じ理論は中国やシンガポールにも当てはまるだろう。

PwC FinTechディレクターのアドバイス

ブロックチェーン熱をうけ、仮想通貨に理解を示す企業も増えている。

2月23日、ブロックチェーンと資本市場について議論するイベントがニューヨークのフォーダム大学で開催された。イベント参加企業は世界4大会計事務所、PwC、デロイト、EY(アーンスト・アンド・ヤング)、KPMG、ブロックチェーン・スタートアップを先導するConsenSysなど、そうそうたる顔ぶれ。

PwCのFinTechディレクター、サブハンカー・シンハ氏はFinTech産業でのキャリアを目指す生徒に、「最も手っ取り早い方法は、自分のお金でビットコインやイーサリアムを買ってみることだ」とアドバイス。

仮想通貨やブロックチェーンに関する絶対的支援を示すレベルには到達していないものの、ポジティブ流れであることは間違いない。こうした社会からの認識が広がりが、ビットコインの未来を築いていくのだろう。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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