コアCPIは13ヵ月ぶりのプラス

55200_ext_15_0

総務省が3月3日に公表した消費者物価指数によると、17年1月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.1%(12月:同▲0.2%)と13ヵ月ぶりのプラスとなった。事前の市場予想(QUICK集計:0.1%、当社予想は0.0%)通りの結果であった。

物価動向のより適格な把握に資する観点から今月から公表が開始された「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は前年比0.2%(12月:同0.1%)、総合は前年比0.4%(12月:同0.3%)であった。

55200_ext_15_1

コアCPIの内訳をみると、電気代(12月:前年比▲6.5%→1月:同▲5.6%)、ガス代(12月:前年比▲7.7%→1月:同▲7.4%)の下落幅が縮小、灯油(12月:前年比0.0%→1月:同19.7%)、ガソリン(12月:前年比1.6%→1月:同11.2%)が前年比で二桁の大幅上昇となったことから、エネルギー価格の下落率が12月の前年比▲4.4%から同▲0.8%へと大きく縮小した。

既往の円高による輸入物価下落の影響などから、鈍化傾向が続いていた生鮮食品を除く食料(12月:前年比0.5%→1月:同0.6%)、被服及び履物(12月:前年比0.6%→1月:同1.1%)の上昇率が高まったこともコアCPIを押し上げた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.06%(12月:▲0.34%)、食料(生鮮食品を除く)が0.14%(12月:0.12%)、その他が0.02%(12月:0.03%)であった。

東京都区部のコアCPIはマイナスが続く

17年2月の東京都区部のコアCPIは前年比▲0.3%(1月:前年比▲0.3%)と12ヵ月連続の下落となり、下落率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:▲0.2%、当社予想も▲0.2%)を下回る結果であった。

電気代(1月:前年比▲7.7%→2月:同▲5.9%)、ガス代(1月:前年比▲12.3%→2月:同▲10.9%)の下落幅が縮小し、ガソリン(1月:前年比12.1%→2月:同15.1%)、灯油(1月:前年比15.2%→2月:同16.4%)の上昇幅が拡大したことから、エネルギー価格の下落幅が1月の前年比▲6.8%から同▲5.1%へと縮小した。

55200_ext_15_3

一方、家具・家事用品(1月:前年比0.2%→2月:同▲0.4%)が下落に転じたこと、テレビ、ビデオカメラなどの教養娯楽用耐久財(1月:前年比▲3.1%→2月:同▲4.9%)の下落幅が拡大したことなどがコアCPIを押し下げた。

東京都区部のコアCPI上昇率のうち、エネルギーによる寄与が▲0.27%(1月:▲0.36%)、食料(生鮮食品を除く)が0.09%(1月:0.11%)、その他が▲0.12%(1月:▲0.05%)であった。

コアCPI上昇率は17年度入り後には0.5%程度に

円安、原油高の進展を受けて、エネルギー価格の下落率は縮小傾向が明確となっている。東京都区部のエネルギーは下落が続いているが、全国は特に上昇率の高いガソリン、灯油のウェイトが高いため、2月には前年比でプラスに転じる公算が大きい。エネルギーによるコアCPI上昇率の押し上げ寄与は17年度入り後には0.3%程度まで拡大するだろう。

55200_ext_15_5

また、既往の円高による物価下押し圧力は残っているものの、足もとのドル円レートはすでに前年とほぼ同水準となっており、夏頃からは円安が物価の押し上げ要因となることが見込まれる。現時点では、全国のコアCPI上昇率は17年度入り後にはエネルギー価格の上昇、円高による下押し圧力の一巡などから0.5%程度まで伸びが高まると予想している。

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長

【関連記事】
2017・2018年度経済見通し(17年2月)
法人企業統計16年10-12月期~10-12月期の成長率は上方修正へ
鉱工業生産17年1月~1-3月期の生産は前期から大きく減速する見込み
貿易統計17年1月~輸出の急減速から貿易収支が2年4ヵ月ぶりに前年比で悪化
景気ウォッチャー調査(17年1月)~回復基調に一服感、トランプ新政権に対する不透明感が重石