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(写真=ThamKC /Shutterstock.com)

受動喫煙対策強化の一環としてプルーム・テックやアイコス(iQOS)などの「電子加熱たばこ」も“規制の対象となった。一般的には受動喫煙の危険性はないと目されていた電子加熱たばこがなぜ規制対象になったのか? そこには世界に対する日本のメンツが見え隠れする。

電気加熱式たばこも当面規制対象

喫煙者にとっては厳しい内容かもしれない。厚労省が受動喫煙対策について新たな規制案を発表、プルーム・テックやアイコスなどの電子加熱たばこも規制対象に含めるとの考えを示した。受動喫煙への影響に対して、十分な知見が得られていないというのが理由だ。一旦規制対象とし、健康被害への影響がないと判明次第規制対象から外すとしている。

政府が受動喫煙対策に厳しく取り組むのにはワケがある。2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックだ。日本の受動喫煙対策は世界に比べるとまだまだ遅れている。
WHOの調査によると、受動喫煙防止に関して日本の現状は世界最低レベルだという。

厚生労働省の『 [受動喫煙防止に関する国際的状況]』世界のによると、188か国中、公共の場所すべて(8種類)に屋内全面禁煙義務の法律があるのは49か国。日本は、屋内全面禁煙義務の法律がなく、世界最低レベルの分類だ。

日本も受動喫煙対策には以前から取り組んでいたものの、罰則も甘く徹底されていない状況だった。世界中から多くの人が訪れるオリンピックで恥をかくわけにはいかない。受動喫煙対策を世界レベルにしようと対策の強化に乗り出しているのだ。

まだ甘い?日本の受動喫煙対策

2020年東京オリンピック・パラリンピックが決まり、厚労省が進めてきた受動喫煙対策の基本は喫煙できる施設の分類だ。施設の用途、施設の利用者から次の3つに分類している。

(1) 建物内禁煙
大勢の人が利用する施設で、他の施設を利用するのが容易ではない施設については「建物内禁煙」。官公庁や社会福祉施設などがこれにあたる。

(2) 敷地内禁煙
建物内禁煙のなかでも、特に未成年者や病人・患者が主に利用する施設は「敷地内禁煙」。学校や病院などがこれにあたる。

(3) 原則建物内禁煙
施設利用者に他の施設を選択する機会があり、娯楽性や嗜好性の強い施設は「原則建物内禁煙」。飲食店などがこれにあたり、煙が外に漏れないようにした喫煙室の設置を可能としている。

また1日に新たに発表した規制案では小・中・高校および医療施設は敷地内全体を禁煙。
ホテルや飲食店は原則建物内禁煙のうえで、バーやスナックなど規模の小さな店舗は喫煙を可としている。

こういった国の規制方針に対しては賛否両論ある。規制が甘いという意見では、喫煙を認める施設があること自体世界レベルではないという声がある。特に小規模店舗の喫煙を認める方針には厳しい見方だ。

日本禁煙学会は以下のような緊急声明を出している。

30平方メートル以下のキャバレー・バー・スナックなどを受動喫煙対策の例外とするとしています。これは、なし崩し的に法案を意味のないものとするだけではなく、IOCとWHOの協定に違反し、これをIOCが受け入れることは無いと思います。 (『健康増進法改正案の改悪についての日本禁煙学会緊急声明』より)

一方で規制を厳しくし過ぎるとお客が来なくなりビジネスに影響するという声もある。今回、規制対象となった電子加熱たばこもこれにあたるかもしれない。健康志向や社会的潮流で長らく低迷していたたばこ産業だが、電子加熱たばこの登場は久々に明るいニュースだった。

フィリップモリスの販売しているアイコスは、1年で0.5%でも成功といわれる市場シェアを7%獲得した。JTのプルーム・テックも福岡で発売したところすぐに品切れ状態。
今年は東京での販売も計画しており、同社はプルーム・テックに手応えを感じ、2017年減益予想にもかかわらず増配を予定しているほどだ。

電子加熱たばこは、これからが期待される成長分野だが、受動喫煙による健康被害払拭が遅れれば影響がでるかもしれない。規制が有望分野の成長に水を差すことになるのか?政府は難しい判断を迫られることになるかもしれない。(ZUU online編集部)