家計簿アプリ,銀行法
(写真=PIXTA)

多くの人が銀行口座やクレジットカードなどを数種類持っている。スマートフォンでこれを一括管理できる「家計簿アプリ」は非常に便利。しかし、現状では個人情報の流出する危険性も高い。何らかの法規制が必要性との声も多く、それが今回の法改正案につながったようだ。

使うと分かる「家計簿アプリ」の便利さ

2017年3月3日に「家計簿アプリ事業者を登録制に」することなどを盛り込んだ銀行法の改正案が閣議決定された。

銀行口座やクレジットカード、現金での商品購入などを一括管理できて、しかも光熱費、食費などを自動的に分類してくれる「家計簿ソフト」。一目で家計の状態が分かることから、節約の手助けにもなると、使用しているユーザーが急激に増えている。無料アプリの大手「zaim」が600万人突破、有料ソフトの「マネーフォワード」が450万人と謳っているので、有料、無料あわせて200種類以上あるアプリを加えると1000万人を超える人たちが活用している計算になる。

これだけ多くのアプリがあり、ユーザーも多くなってくると、やはりセキュリティが心配になってくる。「家計簿ソフト」では基本的には銀行口座やクレジット番号などは登録する必要がなく、WEB上のネットバンキングのIDとログインパスワードの登録だけでいい。アプリによっては口座番号や振り込み時の乱数表番号を登録する場合もあるが、使用したらすぐ破棄され、アプリ側に保存されることはないとのこと。

ユーザーとしては便利なだけでなく、アプリ側からの情報を信じて、個人情報も守られていると判断しているから、短期間でこれだけ普及したと思われる。とはいえ、もしスマートフォンを紛失した場合など、他人に覗かれてしまう危険はある。また、アプリ側でもし悪用目的で口座番号などを保存していたらと思うとゾッとする。

しかしながら、現在はアプリを提供する側に対しての規制はまったくない。そこで何らかの対策が必要という声も多く、今回の法改正案になった。

個人情報保護とともに普及体制も強化

今回の法改正案では、家計簿アプリ事業者は登録制になる。登録する際には、個人情報の流出防止体制や事業者の財務状態などを政府に報告しなければない。報告するだけで悪質業者の排除につながるかどうかは不明だが、現状より改善されることは間違いないだろう。

ただ登録制になって財務状態が脆弱は事業者は排除されることになり、現在ある「家計簿アプリ」が使用できなくなるものもありそうだ。新規参入のハードルも高くなってしまった。

政府としては「家計簿ソフト」のような、スマートフォンを使う決済や資産運用などのIT技術を駆使した金融サービス[フィンテック]を推進したいとの考えがある。そのためには、個人情報の保護を強化することが不可欠であり、またアプリ事業者と銀行間の連携を強化しなければならないとの考えがある。今回の法改正案には、情報提供側の銀行にも体制整備の努力義務を課すことが盛り込まれた。

閣議決定された法改正案は、2017年の通常国会に提出され、会期内の成立を目指している。(ZUU online 編集部)