セクハラ,パワハラ,独身ハラスメント
(写真=LDprod /Shutterstock.com)

パワーハラスメント、セクシャルハラスメントなど、職場で起こりやすい「〇〇ハラスメント」にはいくつもの種類がある。そのなかでも、最近話題に上っているのは「独身(シングル)ハラスメント」だ。

「独身ハラスメント」とは、独身者に対して「結婚しないの?」「どうして?」などプライバシーに踏み込んだ質問を繰り返したり、未婚であることをからかったりして不快な気持ちにさせる行為のことを指す。「結婚(マリッジ)ハラスメント」もほぼ同じ意味で使われている。

加害者の自覚が薄いハラスメント

どのようなハラスメントも、被害者にとっては深刻な問題だ。しかし、加害者のほうにはあまり自覚症状がないという場合が多い。

とくに独身ハラスメントにはその傾向がある。ほんの挨拶程度のつもりで、または部下との距離を縮めようとして、「結婚はまだ?」「いい人、紹介しようか?」などと声を掛けてはいないだろうか。

こういった発言は、結婚したくて努力しているのになかなか相手が見つからない人に対してストレスやプレッシャーを与えてしまう。また、LGBTなど性的マイノリティ当事者にとっては踏み込んでほしくない領域だろう。相手を深く傷つけてしまう言動は避けなければいけない。

内閣府の案にハラスメント懸念

2016年末に「独身ハラスメント」という言葉が注目される出来事があった。企業や団体の結婚支援を後押しするために内閣府が設置した検討会の提言骨子案が12月7日に公開されたが、その内容が問題視されたためだ。

この提言骨子案には、社内の既婚者が未婚者に対して結婚のアドバイスを行う「婚活メンター(良き指導者)」を配置する、といった案が盛り込まれていた。

しかし、個人のプライバシーに立ち入るであろう「婚活メンター」の設置は独身者へのハラスメントにつながるとして、女性支援団体などが9000人分超の反対署名を集めて提出するなどの事態につながった。結果として20日の最終提言案では、「婚活メンター」の設置案は削除された。

内閣府の婚活支援案は、言うまでもなく少子化対策の一環だ。専門家が何度も会議を重ねながら作ってきた提言ではあるが、公開されてすぐに見直しを求める声が上がるなど、検討会の在り方自体に疑問をもつ声も多い。

職場内には結婚したい人もいれば、したくない人もいる。理由があってしたくてもできない人もいる。それぞれの事情への配慮もないままに相談員を配置すれば、ハラスメントや差別へとつながることは目に見えている。

ハラスメントになるか、ならないか

独身ハラスメントとなり得る具体例について考えてみよう。たとえば、あなたの職場に新しく30歳前後の新人が配属されてきたとする。歓迎会の席では、どのような会話が飛び交うと考えられるか。

まずあいさつ代わりに、「結婚しているのか?」と聞く人は多いだろう。独身だと分かると、「結婚の予定はあるのか?」「なぜ今までしなかったのか?」「結婚したくないのか?」と一歩踏み込んだ質問へと移る。交際相手もいないと聞けば、「誰か紹介しようか?」「どんな人が好み?」とお節介を焼く人も出てきそうだ。飲み会の光景として不思議ではない展開と言えよう。

そういった質問攻めが平気な人はたくさんいる。新しい職場に慣れるために、聞かれていないことまで話して場を盛り上げる人もいる。しかし、プライバシーに踏み込まれたくない人も必ずいる。理由があって結婚しない人生を選んだ人もいるし、結婚したくてもその権利が認められていないLGBT当事者もいる。

「結婚してる?」という質問に対して違和感をもたない人にとってはただの日常会話でしかないだろうが、質問によって精神的苦痛を感じる人がいることを忘れてはいけない。相手に嫌な思いをさせているのなら、それは十分ハラスメントになり得る。

加害者にならないためには

独身ハラスメントの加害者とならないためには、どのようなことに気をつければいいのだろうか。

すぐに世話を焼きたくなる人は、自己顕示欲を満たすために行動していないかどうか振り返ってみよう。「縁結びをして人の役に立ちたい」という思いの裏には、「人に認められたい」「感謝されたい」という気持ちがないだろうか。ハラスメントを生み出さないための方法としては、自分から動くのではなく、向こうから頼まれたら世話を焼くようにすることだ。迷惑がっていると感じたらすぐに引くことも忘れずに。

また、相手のパーソナルなことについて笑い話にしたり茶化したりしない、ということも大切だ。独身者に対しての「そんなんだから結婚できないんだよ」といった発言はハラスメントの可能性があるので気をつけよう。

自分のことに置き換えて考えてみる

昨日までの日常会話が今日からハラスメントだと言われることで、困惑する人も多いだろう。しかし、明らかに時代は変わってきている。これまで心無い発言に泣き寝入りするしかなかった人たちが、少しずつでも救われる世の中になってきている。

誰にでもコンプレックスや心の傷がある。「イヤなことをしつこく言われたらどう感じるか」という視点をもって過ごすことで、職場でのハラスメント加害者になる可能性は低くなるだろう。(渡邊祐子、フリーライター)

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