民営化,神戸空港
(写真=Thinkstock/Getty Images)

2018年4月に予定されている神戸市の「神戸空港」民営化で、関西空港、伊丹(大阪)空港を運営する関西エアポートの陣営が運営権を握る方向となった。参加の意向を示していた総合商社の双日〈2768〉が運営権取得を断念したためで、神戸市が期待していた関西3空港の一体運用が実現する見通し。

神戸空港は海上空港でありながら、厳しい運用規制で潜在能力を十分に発揮できていない。実質的な収支も赤字で、規制を乗り越えて空港を生かす方策を考えるのはこれからだ。関西経済界からは規制緩和に向けた議論を期待する声が出ている。

選定委員会の審査を経て8月に優先交渉権者決定

神戸市によると、神戸空港の運営権公募は最低価格176億7000万円。運営権買取企業が前払い金の最低4億5000万円と、2018年度から42年間にわたって毎年最低4億1000万円を支払うことになっている。

関西エアポートと同社大株主のオリックス〈8591〉、バンシ・エアポート(フランス)の3社連合、双日の2陣営が公募参加の資格申請書を提出していた。

しかし、応募の前提となる競争的対話の申し込みに双日が参加せず、辞退を届け出たため、関西エアポート陣営だけが公募に参加する見込みになった。競争的対話は神戸市と応募希望事業者が空港運営の方法などについて調整するもので、この手続きを無視して応募するのは事実上難しいという。

双日広報部は断念の理由について「現地調査も進めて検討してきたが、さまざまな部分を総合的に判断して断念することにした」と述べた。3空港一体運用の実施に限界があると考えたもようだ。

関西エアポート陣営は競争的対話を進めたうえで6月末までに提案書を提出する。選定委員会の審査を経て8月に優先交渉権者に決まる方向。

関西エアポートコーポレーションコミュニケーション部は「3空港一体運営でどのような相乗効果が出るか、見極めが必要。関西経済の発展に貢献できる方向も見据えたうえで、提案書を準備していきたい」と述べた。

開業前の予測に1度も届かず、神戸空港の利用は低迷

2006年に開港した神戸空港は、中心部・三宮の南8キロの海を埋め立てて神戸市が造成した市営空港。開業前には2006年度319万人、2010年度403万人、2015年度434万人の利用が見込まれていた。

スカイマークが拠点空港にしているほか、全日空なども就航しているが、2015年度の年間利用客は就航8路線合わせて253万人。2016年度も1月末現在で就航6路線合わせて223万人にとどまっている。

これまで開業前の予測を達成したことは1度もなく、利用が伸び悩んでいる。実質的な収支は7年連続の赤字。空港島の造成や滑走路の建設には総事業費3140億円が費やされたが、2016年度末時点で1000億円以上の市債残高が見込まれている。

海上空港としての潜在能力を十分に生かし切れていないのは、厳しい運用規制が課せられているからだ。国土交通省や関西、伊丹両空港の地元自治体は神戸空港の開業前、「運用時間を午前7時から午後10時とし、国内線のみで1日30往復以内」とすることで合意した。関西、伊丹両空港と利用客を奪い合わないようにする狙いがある。

しかし、この規制が足かせとなり、格安航空会社(LCC)の国際線誘致や羽田行き最終便出発時刻の後ろ倒しなど乗客の利便性を向上させる取り組みができなかった。神戸市は将来、3空港一体運営で発着枠などの規制緩和が進むことを期待している。

関西は外国人観光客の急増が続き、航空需要はまだ伸びそうな状況。このため、関西の経済界にも3空港一体運営を後押しする声がある。関西経済連合会の森詳介会長は2016年10月の定例記者会見で「3空港一体運営の中で(規制緩和の)議論が出てくれば協力したい」と前向きな考えを示した。

関西、伊丹の両空港は民営化で利用者が増加

関西エアポートは2016年4月から関西、伊丹両空港の運営を進めている。2059年度で両空港の利用者数を2014年度実績の70%増となる5800万人、売上高を60%増の2500億円に増やす計画を打ち出している。

関西空港では1月、第2ターミナルに隣接してLCC用の国際線ターミナルを新設、出国手続きの待ち時間を従来の3分の2に短縮する保安検査設備を導入したほか、出国審査から搭乗口までの通路に免税店やレストランを並べた。

関西、伊丹の両空港の2016年度年間利用客は約4000万人に達し、前年度を3%以上上回る見込み。関空ではLCCのピーチが上海便運航を始めるとともに、ニュージーランド航空がオークランド直行便を再開している。民間の柔軟な発想で民営化1年目の順調なスタートを切ったといえそうだ。

神戸市は複数の企業が入札に参加することで売却収入の増加を期待していた。その目論見は外れたものの、関西エアポートの手腕には期待している。神戸市空港事業部は「競合で売却収入が増えればいうことなかったが、今後は3空港一体運営の推進に向け、事業者とよく協議していきたい」と語った。

規制緩和の行方はまだ不透明だが、神戸空港の活性化が関西経済に大きなインパクトを与えることは間違いない。関西エアポート陣営はどんなアイデアを打ち出してくるのだろうか。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の 記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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