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(写真=Thinkstock/Getty Images)

スコットランドのスタージョン首相は3月13日、英国からの離脱を問う2度目の住民投票を2018年秋から2019年春の間に実施する方針を示した。同日夜、英上院がBrexit法案を可決したことで、英国はEU基本条約である「リスボン条約50条」をすぐにでも発動可能な体制が整ったことになる。

こうした流れをうけ、EUは「英国からの独立がスコットランドのEU残留を保証するものではない」との声明を発表。マルガリティス・スヒナス広報部長官は、「EU加盟国内で分裂があった場合、あくまで新国家の誕生と見なす」と定められたEUの方針が、スコットランドと英国の別離にも該当すると断言した。

「スコットランドのEU残留チャンスはほぼゼロ」バローゾ元EU委員会院長

つまりスコットランドは例え英国から独立したとしても、自動的にEUに残留することは許可されず、新たな加盟希望国としてEUと交渉を行うことになる。

こうしたプロセス上の問題に加え、スコットランドが単独国としてEU加盟を承認される可能性が極めて低い点が、1度目の独立投票時(2014年)にジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾ元EU委員会院長から指摘されている。

独立投票で英政府と「Soft Brexit」取引?

加盟が困難だと知りながら、2度目の住民投票実施に向かうスタージョン首相の狙いに関して、様々な憶測が飛び交っている。

Brexit国民投票の結果次第で「スコットランド英離脱の懸念」が再燃することは、容易に想像できた。スタージョン首相は当初から、英国に引きずられるかたちで単一市場から撤退する可能性に強い懸念を示しており、Brexitのプロセスでスコットランドが発言権を与えられることを要望していた。

英政府が交渉の進行具合では単一市場からの撤退も辞さないと表明したことから、「英政府からはスコットランドと協力しあう姿勢が感じられない」との結論をくだし、2度目の独立投票に踏みきる結果となった。

タイミング的には最悪だ。スタージョン首相の宣言が実行されれば、英国は「自国の離脱」と「自国からの離脱」という歴史的大仕事を同時進行させることになる。想像もつかない重荷となることは確実だ。

この点にスタージョン首相の真意があるとの指摘も挙がっている。つまり2度目の独立投票をおどしに、単一市場へのアクセス権を含む「Soft Brexit(穏やかなEU離脱)」を、英政府に説きふせる意図があるのではないかということだ。

世論に変化の兆し?独立派が残留派を追いあげ

独立の可能性という点ではどうだろう。スコットランドは早い段階からBrexitに強い抵抗を表明していた。昨年6月のEU離脱投票では残留支持率がイングランド46.8%、ウェールズ48.3%、北アイルランド55.7%であったのに対し、スコットランドは62%と最も高かった。
Brexitの影すら見えなかった2014年に行われた独立投票では、55%が英残留を望む結果となった。この結果が英EU離脱によってくつがえされる可能性は否めない。

昨年7月の世論調査「YouGov」の結果では独立支持率は47%と、Brexit決定後も依然として英国への残留派が過半数であった。単一市場へのアクセス権を失ったと想定した質問でも、独立支持率は34%で残留支持率(40%)を下回った。

しかしこの世論調査が行われた時点では、単一市場のアクセス権や在英EU市民の権利を含め、Brexit交渉は比較的穏やかなものになると予想されていた。英政府とEU委員会の交渉開始前から衝突している現在、最新の世論調査では独立派の勢力が追いあげてきていると英ガーディアン紙が報じている。

世論の変化などを差し置いても、独立投票の実現にあたり超えるべき障害が横たわっている。住民投票を実施するには議会の承認が必須となる。スタージョン首相は来週にでもこの手続きを開始すると発表したが、2度目の投票が実施されるか否かという点でも予想が大きく割れている。

Brexitやスコットランドの独立がどのような結果をむかえるにせよ、欧州の歴史に決定的転機が訪れていることは間違いない。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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