ドル円予想レンジ 112.50- - 115.10
「春眠暁を覚えず(春の眠りは心地よくて朝が来たのにも気づかなかった)」-。これは『春暁』孟浩然の詩である。3/16午前3時にFOMCは、政策金利を0.75-1.00%に引き上げを決定。イエレンFRB議長は「(利上げ理由は)経済は良くなっていて、力強さに自信を持っているから」と述べた。しかしドル円は心地よかった114円台後半から113円台前半に朝が来る前に急落している。
米利上げでもドル高にならず
菅官房長官は3/16午前、「米国の利上げは好調な米国経済を背景にして行われる。そうであれば日本経済、世界経済にとって必ずしも悪いことではない」と発言。しかし、米利上げ後にドル円は急落。何故か。前号でも指摘したがFOMCでの金利見通しでは、今年の米利上げ回数は(3/16を含め)3回と、去年12月FOMC時の見通しと同じだったからである。
イエレン議長はこの先、利上げペースを速める意図はない、追加利上げは「緩やかに」留まる事を強調した。今後の利上げ加速期待は封じられたのだ。“Fed increases interest rates as inflation looms(FRBはインフレ見通しが強まると利上げする)”と3/16の英経済紙は一面で示した。
確かに2月米消費者物価指数は前年同月比+2.7%と、2012年3月以来で最も大幅な伸びを示していた。しかし前月比では減速だ。基調としてインフレ圧力が続いているが、更なる追加利上げを見込むには拙速。まして慎重なイエレン議長が、、と筆者は推考している。
円も証人喚問されるのか
筆者が警戒を覚えたのは2つ。ひとつは3/16午後、金融政策決定会合を終えた日銀黒田総裁が「金利差だけで為替を予測しても当たらない」と発言したこと。米政権による円安誘導批判に反論した格好だが、わざわざ言う必要はなかったのでないか。財務省出身での矜持か。
二つ目は3/16夜、学校法人『森友学園』を巡っての証人喚問が与野党合意で3/23衆参予算委員(午前、午後各2時間)で行われることが決定したことだ。
東証3月第2週(3/6~10)投資部門別株式売買状況において、約70%を占める海外投資家はこの手の政治リスクに敏感である。投機的な日本株売りに伴う円買い仕掛けに対し、安倍政権の盤石性を鑑みた本邦勢からの逆張り(日本株買い/ドル買い円売り)場面も想像しておきたい。
3/20週ドル円上値焦点は日足一目均衡表雲帯上下限113.43-115.13、そして1/19、3/10高値圏115.52-635意識。下値焦点は113円台維持、3/16安値112.89、3/1安値112.75。割れた際は2/28終盤に急上昇した112.30-70価格帯が意識されるが長期資金や輸入、買い遅れ組の下支えを推考している。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト