ビル・ゲイツ氏やノーベル賞受賞経済学者でもあるイェール大学のロバート・シラー教授が、「ロボットが人間から職を奪うのであれば、ロボットにも所得税を払わせるべき」という理論から、「ロボット税」なるものを提案した。

ロボット化により企業がうかせた人件費の一部を税金という形で徴収し、ロボット化により失業したあるいは職探しに苦戦する労働者の育成に投資することで、社会の機能に生じる損傷を最低限にとどめる意図だ。

多くの企業は「ロボット化による追加税」に猛反発

シラー教授の発想は、2016年5月にEU(欧州)議会法務委員会マディー・デルヴォー議員が提出した「欧州における対ロボット政策、法律をめぐる動向」という草案に基づくものだ。この草案ではEU委員会が重要分野として促進を試みている「ロボティクス」に関る問題点を様々な角度から検証している。

「ロボット法プロジェクト」では5つの主要目標(社会への技術の統合化、ロードマップ、分類学、哲学的・人類学的・社会学的な帰結、規制ガイドライン)を設定。AIネットワークの構築や量子コンピューター、エコシステムの発展まで、幅広い領域にわたりロボット化が一段と進むと予測されている未来で、「人間とロボットが共存できる環境創り」を探求している。

しかしデルヴォー議員による「自動化によって創出された利益の報告を企業に義務づける」という提案は、多くの企業から猛反発を買う結果となった。ビル・ゲイツ氏やシラー教授はデルヴォー議員の見解を支持。「自動化で人員を減らした企業は追加税を支払うべき」と断言している。

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(写真=Thinkstock/Getty Images)

ゲイツ氏、シラー教授は「ロボット税での社会還元」を主張

ロボット化は人間の脆弱分野を克服する、あるいは効率化を図り生産性を向上するという点で、社会に多大なる貢献をもたらす。しかしその一方で雇用市場が縮小されることはほぼ確実だ。

一例を挙げると、PwCが英国の先行きを予想した最新レポートでは「2030年までに英労働市場の30%が自動化されている」という。企業側が大幅な人件費節減から創出できる利益は計り知れない。

そこでその30%に支出されるはずであった分を「ロボット税」として納め、自動化による失業者や新たな領域で必要となる人材育成などに投資する。そうすることで「社会への還元」になるというのが、シラー教授やゲイツ氏にいおうとしているところだ。

「未来の職業」もいずれは自動化?

自動化が進むにつれて新たな職業が創出され、不要となった職業の代用となる」との楽観的観測に対し、シラー教授は疑問を唱えている。自動化が加速すれば、新たな雇用創出を上回る可能性も高い。

英人材コンサルティング会社、BrightHRは昨年12月、「潜在的な近未来の職業」というレポートを発表した。そこで挙げられていた「ゲノム開発者・設計者・デザイナー」「バイオメトリクス(生体)認証専門家」「SNSアナリスト」「個人情報保護コンサルタント」なども、AI(人工知能)が発達するにつれ最終的には人間の代用が務まる水準に達するはずだ。

要するにどれだけ人間の職業を守ろうとしても、ロボットの侵略はもう止められないというのが両者の見解だ。確かに共存できる範囲は無限ではない。

アルコール税やたばこ税のような抑制効果を期待

コロンビア大学経済部のエドムンド・フェルプス教授は著書「Rewarding Work」の中で、社会における人としての地位の重要さを強調している。フェルプス教授の警告は、「人間が働いで自分自身や家族を養えなくなった時、全人類の機能が損なわれる」との懸念に基づく。

ロボット化の利益開示やロボット税に反発している企業にとっての切り札は、ロボットと人間に同じ規制は通用しない」という点だ。シラー教授は、「アルコール税やたばこ税に飲酒や喫煙を抑制する意図がこめられている」とし、ロボット税を導入することで人間の存続よりも利益創出に走る企業をある程度食いとめることができると反論している。

シラー教授はロボット税という課題とともに、所得格差を軽減するうえで高所得層が恩恵をうけ、低所得層が圧迫されがちな課税制度の大幅な見直しも提案している。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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