人口減少時代を迎え、どの地方自治体も力を入れているのが、定住者の確保。住宅取得に対する助成や子育て支援はもはや当たり前になったが、大阪府摂津市は医療費助成の対象を大学卒業年齢に相当する22歳まで拡充する方針を固めた。徳島県美馬市は県外のシングルマザーらが地元の医療介護施設に就職すれば、無料で介護資格を取得できる支援を始めた。
それぞれ知恵を絞った定住促進策を打ち出し、住民を確保しようと競い合っているわけだ。2020年の東京五輪が終わるころには人口増加を続ける首都圏も減少に転じる。自治体の生き残りをかけた定住者獲得競争が本格的に幕を開けた。
摂津市は医療費助成の対象を22歳まで引き上げ
摂津市はこれまで中学生までとしていた医療費助成の対象を、2018年度から大学卒業年齢の22歳になる年度末まで引き上げる方針。助成対象を22歳までとするのは、北海道南富良野町に続いて全国2例目になるという。
現在は中学生までなら通院、入院に関係なく、1日当たり500円で医療機関を受診できる。制度の引き上げ後は高校卒業に相当する18歳まで、就学条件や保護者の所得制限を設けずに無条件で助成する。19歳から22歳までは就学条件や所得制限を設けるかどうか、今後検討していく。
制度の引き上げにより、助成対象者は現在の1万900人から約5300人増える見込み。市の負担額も年間で8000万円ほど増えるとみられる。
市は大阪市の北東、北摂地帯の一角にあり、大阪都心から10キロ圏内。大手空調機器メーカー・ダイキン工業〈6367〉など多くの工場を抱えるが、2010年に阪急電鉄京都線の摂津市駅が開業して以来、マンション建設が相次ぐなど急ピッチで宅地開発が進んでいる。
人口は2015年の国勢調査で8万5000人。1988年の8万8000人をピークに緩やかな人口減少が続いていたが、ようやく歯止めがかかりつつある状況。だが、関西は既に人口減少に入っており、近隣の吹田市、箕面市などと定住者獲得競争が激化している。
摂津市子育て支援課は「子育て世代の転出超過を防ぐためには、さまざまな施策を打ち出す必要がある。人口対策の一環として医療費助成対象年齢の引き上げを進めたい」と語った。